(一人ブレーンストーミング)

今、時代はひらめきを必要としている・・・・・(茂木氏参)

 時代によって、求められる人材、能力の質というものは変わってきます。
 産業革命以前、今で言う第一次産業が生産の基礎だった頃は、肉体労働がメインでしたから、それに耐えうる身体が必要とされました。
産業革命以後、近代を経て高度経済成長を迎える頃には、知識が豊富な人や事務処理能力の高い人、俗に言う「ホワイトカラー」が評価されてきました。
 では、現代社会においてどのような能力が求められているのでしょうか。
 そのキーワードとして、「創造性」や「ひらめき」を挙げることができると私は思っています。

リラックスがひらめきを生む

退屈はひらめきへの近道

 ひらめきを生むためには、記憶を司る側頭葉に、ある程度の準備ができていないといけません。その準備とは「学習」のことです。ひらめくためには、それだけのマテリアルを側頭葉に入れ込んでおかないといけません。そしてそのために学習が必要になります。

脳のアラーム・センターと司令塔

 前頭葉に、「ACC「Anterior Cingulate Cortex」(前部帯状回)という部位があります。ここは脳における「アラーム・センター」(警報センター)みたいなところで、例えば、痛みを感じた時など、何か尋常でないことが起こると、このACCが最初に反応して活動します。

 その一方で、グリアはもっとゆっくりとした機能を担っています。ニューロンに成長を促し、栄養を補給するなどのサポートをすることが、グリアの大切な役割なのです。また、隣り合うニューロンの電気的活動が「混線」しないように、「絶縁」のゾーンを提供することも、グリアの役割であると言われています。

 そもそも、何もないところから新しいものが生まれるはずもありません。もとになる記憶の蓄積が豊かであればあるほど、それを素材とした創造のプロセスの可能性も広がるのです。

 年を取ると創造性が衰えるとよく言いますが、これは必ずしも正しくはありません。年齢を積み重ねるほど、創造性のもとになる記憶は豊富になるのですから、むしろ創造性が高まってもよいはずです。
実際、本能を除けば白紙で生まれてくる赤ちゃんは、様々なことを学習する能力はきわめて高いのですが、創造性はゼロに等しいということは誰でも知っていることです。

 自閉症の子どもの既知部に、超人的な記憶力や驚くほどの計算能力を有する人がいますが、これらを「サヴァン能力」と一般に呼んでいます。映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じた、「電話帳の番号を全部覚えてしまう」男を覚えている方も多いでしょう。

端的に言えば、「直面する不確実性にうまく対処するため」です。

 ひらめきとは、いわば人生という偶有性の海に飛び込み、泳いでいくために必要不可欠な「ストローク」のようなものなのです。

 その際に大事なのは、何よりも自発性(イニシアティヴ)です。すでに述べたように、脳の神経細胞は、命令をじっと待っているのではなく、自発的に活動するという性質を持っています。
自発的な脳活動が外部の環境との間に密度の濃い相互作用のループをつくることで、ひらめきや創造性が生まれるのです。

セレンディピティの起源

 「セレンディピティ」の日本語訳は、「思わぬ幸運に偶然出会う能力」。また、そのような偶然による幸運との出会いそのものも、「セレンディピティ」と呼ばれることがあります。
まだまだ聞きなれない言葉かもしれませんが、恋愛映画のタイトルにもなっていたので、あるいは耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。

セレンディピティを活かすには

(1)行動

(2)気づき

 幸運にもセレンディピティに出会ったとしましょう。
しかしそのことに気づかなければ、せっかくのセレンディピティも台無しです。いかに、普段と変わったこと、注目すべきことに気づくかということが大切なのです。V章で述べた「チェンジ・ブラインドネス」のような現象で問題になっているのは、まさにこの点です。

(3)観察

(4)受容

(5)理解

無意識との対話

「意識の前頭葉と無意識の側頭葉間での対話」