不老不死の妙薬は現代医学の力で実現可能だろうか・

 まずは、老化現象から解明していく。老化現象とは新しい体組織が作られなくなることである。では、なぜ新しい組織が作られなくなるのであろうか。
 それは細胞分裂の際におけるDNAの複製回数の制限によることが原因とされる。DNAは完全な複製を作ると思われていたが、実はそうではなかったのだ。
 DNAは4個の塩基対の組合せによるものだが、その両端に「テロメア」といつ構造がある。このテロメアは実は複製されるたぴに、その長さが短くなっているのだ。そして、その長さがある長さになると、それ以上複製されることはなくなってしまう。
 したがって、細胞分裂が起こらなくなり・老化が起きると言うわけである・
 もし、テロメアを短くすることなく複製することが出来たら…そう、いつまでも細胞の複製はし続けることになり、老化も起こらなくなるのである。

 テロメアを短くすることなくDNAの複製がされるようにできないであろうか。
 実は、短くなったテロメアを、再び伸ばす作用のある物質が発見されているのだ。それは、「テロメラーゼ」という。そして、このテロメラーゼはある細胞の中から発見されたのだ。それは、癌細胞である。癌細胞は複製回数が制限されておらず・寿命というものがない(こういった細胞を「不死化細胞」と言う)。
 不死化細胞である癌細胞からテロメラーゼが発見されたことにより、テロメラーゼこそが不老不死の妙薬かと期待されている。
 しかし正常細胞からはテロメラーゼが発見されていないことから、不老不死にはテロメラーゼだけではなく何か他の要因があるのではないかという推測がされていた。
 そんな中、その「他の要因」が発見されたのである。
 それは、正常な細胞にはあるが不死化細胞にはない、ある種のタンパク質であった。そのタンパク質は「モータリン」と名付けられ、その後見つかった遺伝子は「モータリン遺伝子」と名付けられた。老化した細胞にモータリンタンパク質の働きを抑える「中和抗体」を注入する実験を行ったところ、なんと老化細胞は再び分裂を再開したという。
 つまりモータリン遺伝子こそ、細胞の寿命を一手に握っている遺伝子なのだ。この遺伝子があるために、細胞は死ぬ運命をたどるのだ。同様に、我々の体も徐々に老化していき、いつかは死ぬ。不死化細胞にはこのモータリン遺伝子がないから、死なないのだ。
 ところが、不死化細胞にもモータリンタンパク質が発見されたのだ。しかし、よくよく調べてみると、正常細胞のモータリンタンパク質は細胞質に散らばっているのだが、不死化細胞のモータリンタンパク質は細胞核の周りだけにあり、アミノ酸組成も違うなど、両者の性質は明らかに異なっていたのだ。そこで、正常細胞のモータリンを「モータリン1」、不死化細胞のモータリンを「モータリン2」と名付けた。このモータリン2こそが、細胞を死なせないための遺伝子なのだ。
 例えば、老化した細胞にモータリン2を、癌細胞にモータリン1を注入してやるとどうなるか。
 モータリン2を注入された老化細胞は再ぴ分裂しだし、逆にモータリン1を注入された癌細胞は死んでいくことになるのだ。
 正常細胞のモータリン1は前述のテロメラーゼを押さえ込んでしまう力を持っていると考えられている。それはそうであろう。もし正常細胞にテロメラーゼがあれば、癌細胞と同じように分裂を操り返し、不死の世界ができあがっているはずである。
 詰まるところ、肉体を構成している細胞が死ななければ、不老不死は実現できるのだ。
 そう、不老不死の妙薬最有力候補はテロメラーゼとモータリン2といえるのだ.近い将来、不老不死は実現可能かもしれない。

* 心筋細胞・骨格筋細胞・神経細胞(分裂終了細胞)

血管系細胞・腸の上皮細胞

患部の細胞・全細胞  以上の細胞のモータリン1遺伝子を抜き

            同    モータリン2遺伝子入れる

           同にテロメラーゼ産生遺伝子を入れる。
癌細胞にモータリン1を入れ、モータリン2を抜く

   テロメラーゼ抜き、その産生遺伝子も抜く