人格障害

眼窩前頭皮質の役割
前頭葉に位置(Figure 11.6)
○背内側視床、側頭皮質、腹側被蓋野、臭覚系、扁桃体から直接入力を受けている
○入力はその環境で何が起こっていて、残りの前頭葉でどんな計画が作られているかという情報
○出力は脳のさまざまな部位(帯状皮質、海馬体、側頭皮質、外側視床下部扁桃体)に行く
眼窩前頭皮質を損傷した人の例
・まじめで勤勉で精力的な人→子供っぽく、責任感と思いやりのない人
・彼は計画を立てたり、実行することができない
・気まぐれで移り気が多くなった
眼窩前頭皮質を損傷した患者
・自分の行動の結果に無感心になる
・有害な刺激に敏感ではあるが、気にはしない→感情的反応がない

眼窩前頭野

 網膜の裏側にある眼窩前頭野は、脳の前頭前野皮質と皮質下が出会う重要な位置を占めています。そして、情動脳である大脳辺縁系と、知性の脳である前頭前野をつなぐ働きをしています。つまり、情動の源である大脳辺縁系扁桃体が喚起した情動を制御し、扁桃体からの要求を抑制する働きをするのです。周囲の状況を的確に解釈し、内的及び外的経験に照らし合わせて、意思決定を行なうためには、大切な部位です。

 この部位の機能が低下すると、共感する力が損なわれます。

 多くの精神疾患、あるいは人格障害発達障害は、前頭前野帯状回眼窩前頭野などの機能障害に原因がありますが、この眼窩前頭野の障害では、辺縁系の活動の調製、統合に支障が生じます。すなわち、抑制力の低下が起き、衝動をおさえられないといった、いわゆる強迫性を生じるのです。

 衝動的に、結果を省みずに行動する、爆発的、攻撃的行為、怒りっぽい、不適切な言動など、自制のきかない、無神経な、言動がみられる、などなど。

 また、気が散りやすく、集中力が乏しく、周囲を模倣する等の特徴もあります。対人関係で問題を生じるのは、思いやりの欠如です。この部位に機能異常があると、周囲に対する思いやり、配慮が欠けてきます。相手の気持ちを読む力、同情心、感情の移入などが損なわれるのです。
 一方、記憶力、注意力、作業記憶などの認知機能には明らかな異常はみられません。知能検査を正常です。

 これらの症状から、反社会性人格障害自己愛性人格障害、強迫性人格障害などの診断をされますが、原因が脳血管障害であることもあります。

 人格障害は症状から見た病名であり、その背景には脳の器質異常、機能異常が複雑に絡んで存在しています。

内側前頭前野皮質

 脳の内側前頭皮質は自己知識や他者知識の活性化、メンタライジング、道徳、報酬価の表象といった多様な認知機能に関連して活動増加が認められることが報告されている。

また密接な神経連絡を持つ前部帯状回や外側前頭前皮質では行動選択機能が実現されていると考えられている。

前部帯状回皮質

 前部帯状回皮質は、前頭部の深いところにあります。この部分の神経回路は強迫性、いわゆる『こだわり』と深く関わっているといわれています。

 物事の順序にこだわる、やらなくてはならないといった観念に駆られる、何らかの習慣化した儀式を行なっている、無意味かもしれないと思っても、そうせずにはいられない、など等。

 前部帯状回皮質は、認知の切り替えを担っています。一つの考えから別の考え、他の選択肢へと視野を広げる、ギアチェンジのような役割です。

 強迫性障害のSPECT画像では、前部帯状回皮質と大脳基底核視床領域の血流は高いものになっています。前部帯状回が過活動となっているのです。ここが過活動となると、柔軟性が損なわれます。

 強迫症状(こだわり)は、前部帯状回皮質の活性が亢進して、刺激が少ないにもかかわらず、情動が過大に活性化することによっておきます。その情動とは、不安や恐怖など、本能的でネガティブな情動です。

 適切な神経回路からの抑制がはずれ、この不安や恐怖を、合理的な知性で制御できなるなるのが、強迫性障害です。

 前部帯状回皮質は、「情動脳」である大脳辺縁系に属しています。大脳辺縁系は、恐怖、不安、好き嫌いといった、本能的な情動を担っています。

 それに対して、前頭部にある大脳皮質の前頭葉は「理性脳」といわれ、人間らしい合理的思考の脳です。

 SSRI抗不安剤が前部帯状回皮質の血流鎮静化に効果があるとされています。

セロトニンの前駆物質である蛋白、トリプトファンを多く含む食品を食事から摂取するのも有効ですが、何より人の心は経験と言う食物で養われています。良い経験を自ら作っていくことがたいせつです。


前部帯状回皮質

前頭眼窩皮質

外側前頭皮質

内側前頭前皮質
       右四項に大調和Eg入れる