アービンラズロ-・・・・・・・・2

宇宙の驚異的な一貫性

 現在、宇宙論で標準的と考えられているモデルでは、わたしたちが生きている宇宙は、約一三七億年前に起こった大規模な爆発によって始まったとされる。ビッグバンと呼ばれるこの爆発は、仮想エネルギーの海、すなわち量子真空の揺らぎのなかで起こった。

その領域の真空が不安定になり、想像を絶する高温・高密度の火の玉が生まれた。最初の千分の一秒のあいだに、現在宇宙空間に存在しているすべての物質が合成された。

真空から生まれた粒子―反粒子対は、互いに衝突し合って消滅し、最初に形成された粒子の一〇億分の一(「物質」が「反物質」よりもほんのわずか多く存在していた、その超過分)だけが生き残り、それらが今の宇宙の物質的な構成要素を作り上げている。

 物理的世界は、言葉では表現できないほど不思議であるのは確かだが、けっして理解できないものではない。

その重要な特徴は、時間も空間も超越した、「非局在性」と呼ばれる絡み合いである。非局在性は、微視物理学的な現象であると同時に、宇宙論的な現象でもある。

そこには、宇宙の極微の構造から、極大の構造までが関与している。イギリスの物理学者クリス・クラークは、何ら躊躇することなく、「宇宙全体は、絡み合った一つの量子系である。
これまでもずっとそのような状態にあったし、今後も常にそうであり、完全に一貫性を保ちつづけるだろう」と断言した。