21世紀的

自分中心、とにかく儲ける。そうして生きる人が勝ち組。

そんな世の中を変えてやると、下町の本屋のオヤジが立ち上がった。

書店主・清水克衛は、客に本を薦めるのみならず、悩みを聞き、酒を飲みながら励まし、説教し、とことんおせっかいを焼いてきた。

人と人がつながり、助け合って感謝する日本を取り戻す。仲間ができれば、商いだってうまくいくと清水は信じる。

何より、生きる楽しさや幸せがそこにあると。

楽しいお客さん、仲間と、わくわくしながら仕事ができるのって、最高の幸せ。

『仕事7割』で商いも成り立つのが一番いい。日本には、その下地がある。

 飄々とした雰囲気。ひとたび話し出せば落語の口上ごとく、ユーモアがあって、話の先を期待させる。
そんなとっつきやすさから清水の懐に飛び込むと、思いのほか熱い。
人と人がつながること、感謝し助け合うこと、それが世のためにも君自身のためにもなるという価値観が、ぶれない人だとすぐにわかる。

 「俺が子どものころ、家の事情で朝飯を食べられない同級生が4、5人いたんですが、おやじはその子たちを毎朝ウチに呼び、一緒に飯を食っていました。中学3念のときにおやじが死んじゃったときは、俺の妹のお茶の背せいが、赤の他人の俺を3年間下宿させてくれた。そいうのが、連綿とつながってきたです」

 清水が困っている人や苦しんでいる人を放っておけないのは、父や恩師の姿を見てきたからであり、自身が痛みを知っているだけに、清水の声は悩める客の心に響くのだろう。

それに、人のためにおせっかいを焼くことが店の商いにもつながっている実感が、清水の言動を厚いものにしている。

「お客に『買ってくれ』と言っても売れない時代になってきた、そんなにおいを感じます。

『買ってくれ』の前に、人のために何かして喜んでもらう。
そうしている会社が、商いもうまくいくようになってきたと思います。『仕事7割』で商いも成り立つのが一番いい。日本には、その下地があるんですから」

 実利や見えが頭から離れず、まず考えてしまうのは自分のこと。
でも、それが本当に幸せなのかと、誰しも心のどこかで感じているのではないか。

世直し本屋さんは、そんな気持ちに本のワンフレーズ、自身の言葉を打ち込んで、背中を押す。誰かに背中を押してもらえれば、変わることができる人は少なくない。
日本はまだまだ捨てたもんじゃない。