洞爺湖サミット

 洞爺湖サミットをめぐる国際報道ではG7の機能低下が指摘されている)、間もなく起きるかもしれないイラン・イスラエル戦争などによってイスラム世界と中露(BRIC)の結束が高まっていくのだとしたら、それはまさに、世界の政治体制の中での「与野党交代」である。

 今後、これまで世界を支配してきた米英中心の体制が崩れ、人々が「世界の崩壊」を嘆く中で、静かに「影の内閣」的な非米同盟のネットワークが、主導的な影響力を持ち始めるのではないか。
世界のマスコミやアカデミズムの多くは、米英中心体制の傘下にあるので、この転換はまともに報道されず、隠然とした動きになる。非米同盟的なネットワークは穏やかなものなので、既存の欧米諸国のネットワークは、その中に取り込まれていく。

多極化した方が世界は安定する

 米英中心主義の勢力はマスコミを使ったプロパガンダが非常にうまいので、世界の人々の多くは、米英の影響力が低下して中露が台頭すると世界は不安定化し、戦争と抑圧が拡大し、自由な経済成長は阻害され、人類は不幸になると思っている。

 しかし実際には、イギリスがドイツの台頭を抑えるために第一次世界大戦を画策して以来、米英中心の体制は、米英が中心であり続けるために戦争を連続的に起こさざるを得ず、冷戦体制を維持するために親米諸国で独裁体制が奨励され、米中枢の冷戦派と多極派の暗闇でベトナムイラクの戦争が泥沼化された。

 (中国の「チベット弾圧」も、チベットが英領だったインドの北にあり、イギリスが中国を混乱、弱体化させるため、1950年代からチベット人組織を操ってきた。チベットの旗を掲げて欧米の町や東京でデモ行進する人々は、実はイギリスの策略に、知らずに乗せられている)

インフレはドル離れを誘発する

 インフレとレバレッジ解消による不況は、先進国だけでなく、中国やインドなど非米的BRIC諸国にも波及することは間違いない。「世界の工場」たる中国は、世界から集まった部品を組み立て、製品として世界に輸出して経済成長してきたが、エネルギー価格の高騰による運賃の値上がりは、中国企業のもともと薄い利幅をさらに減らし、中国の成長モデルを困難にしている。
中国から欧州へのコンテナの運賃は、ここ数年で3倍に跳ね上がった。

 とはいえ、世界的インフレの原因はドル不安であり、中国のインフレ激化は、人民元の為替がドルに擬似ペッグ(対ドル為替が少しずつしか上がらない仕掛け)しているために起きている。

中国がインフレから離脱する決定的な方法は、人民元の対ドル為替の大幅な上昇を容認することである。
中国だけが通貨を切り上げると、輸出競争力が失われてしまうが、今はドルペッグしている他の主要通貨と同時期に、中国がドル離れをするなら、悪影響は少ない。
他の主要通貨とは、たとえば中東のペリシャ湾岸産油国GCC)の通貨である。