<世界金融パニック>

70%

 ついに来るべきものが来たようです。米国金融大手であるリーマンブラザーズの株価が昨日(9月11日)だけで40パーセント以上も下落、ついに株価が一時は3ドル台に下げてしまったのです。

つまり「リーマンブラザーズ倒産」も、時間の問題だと見られています。・・・今既に倒産

 このリーマンに投資していた世界に著名な投資家ジョージ・ ソロスも、100億円もの損失を出してしまったと世界中で話題になりました。

リーマンブラザーズは郵政民営化後に、資金運用のアドバイザーに選任されています。
 リーマンが倒産すると、おそらく郵貯の投資数兆円〜数十兆円は戻って来ない可能性があります。
米国当局は事実上は倒産しているリーマンブラザーズの救済策として、バンク・オブ・アメリカに買収させようと水面下で工作しているようです。いずれにしても残された時間は、もうほとんどありません。

 その他米国ではいくつかの名のある大手金融機関が、すでに倒産に危機に瀕しています。さらに米国内ではこれからの9月、10月でいくつか地方銀行、日本でも著名な生命保険会社や大手自動車会社などが次々と倒産すると噂されています。

 金融機関が連鎖倒産を始めるとパニックがパニックを呼び、より重大な事態へと発展します。その際に政府当局が出来ることは金融機関の取引停止、取引口座の閉鎖くらいしか手立てがないので、米国政府はただちに非常事態を発令し「預金封鎖」を行うでしょう。

 その影響はおそらく全世界に及び、世界中の各国政府が米国に右へならいして金融機関の閉鎖を打ち出す可能性があります。ところが日本はこれから連休に入りますが、実はこの時期が米国の金融波乱の大きな山場になるのは間違いないでしょう。

 なぜ、ここまでの事態が起こるかというと、米国の2つの住宅金融公社がサブプライムのつながりで経営危機に陥り、その救済が上手くいっていないからです。ウォール街出身のポールソン米財務長官の画策で、この2公社を救済する法案はすでに米議会を通過しているのですが、最近、議会がポールソン長官に強い不信感を抱き始めているのです。

 というのはポールソン長官はこの2公社の救済法案を提出する際に議会に、「救済案にある投資金額(22兆円)は見せ金であって、実際は使わない」と説明していました。

 ところが、それから1ヶ月もしないうちに今度はこの2公社を国有化するという動きが米国政府側から出たために、話が違うということで議会側が「公聴会」を開き政府側の見解を正すということになったのです。その公聴会は、これから開かれる予定です。

 事実2兆円を公的資金として投入しても問題解決はほど遠い状況下にあります。2公社の債務合計が550兆円近くもあるといわれ、かりにその10パーセントが毀損した

としても55兆円が必要です。しかも最近になって、この2公社の決算に粉飾の疑惑が持たれ始めています。
 そうこうするうちに先週にはNY証券取引所が、株価の大幅下落を理由にその2公社の上場廃止を決定しています。そのために2公社の株価はすでに1ドルを割り、90セント台に落ちています。このままいくと時間切れとなり、間もなくこの2公社は倒産する可能性があります。
 問題の2つの住宅公社(ファニーメイフレディマック)がこれまで販売した証券化された住宅債券の総額は560兆円、それに加えこの2公社が保証している住宅ローンは数百兆円を超えると言われています。

 (ちなみに日本のGDPは年間500兆円)かりにこの2公社が国営化後倒産したとなると、米国政府が抱える損害額が天文学的に膨れ上がる可能性があるので、2公社の救済策に議会が横槍を入れ始めてきているのです。

 この2公社が倒産するとなると米国内だけではなく、その影響は全世界に及びます。ファニーメイフレディマックが全世界の金融機関に販売した債券は総額約1兆4800億ドル(160兆円)にものぼります。

 最近、IMF国際通貨基金)がこの2公社が販売した債券だけで全世界の金融機関が被った損失は、これまでに約1兆1000億ドル(約118兆8000億円)にものぼると発表しました。つまり、いまの段階で世界中の金融機関が購入した債券は42兆円分の価値しかなく、すでに119兆円の損失が発生している訳です。

 これからファニーメイフレディマックの2公社が倒産するとなると、世界中の金融機関の損失はより拡大します。倒産により証券化証券が、紙切れ同然になるためです。

 このうち欧米の銀行の損失はすでに70兆円超、中国は2.5兆円で、日本の金融機関は14兆円超もの巨額な損失が発生しています。中国の場合は、米国の2公社の経営危機が明らかになっていこう、購入した証券化債券を次々と売り払っていると言われます。

 驚くべきことに韓国の場合、外貨準備は米国債ではなくこの2公社の証券化された債券だと言われます。

先日読売新聞が掲載した、日本の金融機関の損失額は以下のようになります。

農林中金:491億ドル(5兆3000億円)

三菱UFJ:264億ドル(2兆8500億円)

中央三井:71億ドル(7718億円)

三井住友:40億ドル(4308億円)
あおぞら:9億ドル(943億円)
みずほ:0.4億ドル(40億円)
日本生命:269億ドル(2兆9000億円)
第一生命:120億ドル(1兆3000億円)
三井生命:8億ドル(894億円)
明治安田生命:8億ドル(874億円)
損害保険ジャパン:7億ドル(744億円)

東京海上:6億ドル(632億円)
三井住友海上:4億ドル(440億円)
大和証券グループ本社:14億ドル(1524億円)
合計1311億ドル(14兆1617億円)

 2008年度の決算で、上記金融機関は大幅な赤字を計上せざるを得ませんし、sらに2公社が倒産すると赤字幅は大幅に増加します。そのためいま日本国内でも激増している金融機関による「貸し渋り倒産」も、これまで以上に増え続けてゆく筈です。

 先日、農林中金(JA BANKを支配)の某理事が米国メディアの取材に答え、「農林中金は今後6兆円ほど、証券化債券を買い増しする予定」と発言、一部で「気が狂っているのではないか」とか「米国の陰謀に乗せられているのではないのか」とかの批判の声が湧き上がりました。

 このような幹部がいる限り、JA BANKの倒産も近いのではないでしょうか。

 つい先日金融の世界に詳しい知人から、「最近多くの金融機関で、預金を全額おろす人たちが増えているようだ」、という情報を頂きました。

 いずれにしても米国で起きている金融パニックは、以前からお伝えしているようにあまりのも巨額であるために救済の手立てがなく、間もなく世界を陥れる「世界金融パニック(世界恐慌)」をわれわれが体験するのは間違いないようです。

 追記
自民党福田辞任後の総裁選挙に突入したとたんに、自民党への支持率が上昇しているという世論調査の結果にはあきれ果ててモノが言えません。

 いま世界中に1000メートルを超えるような巨大津波が押し寄せようとしている時期に、「政権を投げ出した首相」を選出した政党をいまだに支持をし続けるという日本人の感覚は、尋常な沙汰ではないと思います。

・ ハリケーン「 アイク」接近で米大統領テキサス州に非常事態宣言しました。大規模な被害が発生する可能性が高まっています。

・ 欧州でも経済状況悪化でユーロが大幅下落して来ています。英国も住宅バブルの崩壊で景気の悪化が深刻になってきています。株価も下落気味です。

・ 中国でも上海総合指数が昨年10月の6000ポイントから、危険水域の2000へ限りなく近づいています。また、海南島では地震の前兆を感じさせる異常6割現象が相次ぎ、住民の6割が中国本土に移動し始めているそうです。

▼ 米政府の自滅策

 今後、リーマンの破綻によって、米国発の国際金融危機が悪化することは、ほぼ間違いない。

 すでにメリルリンチモルガンスタンレー、ゴールドマンサックスといったほかの投資銀行の先行きが懸念され、この3社の中で最も株価の下落が著しく「リーマンの次に潰れる」と予測されているメリルリンチは、リーマン破綻を受け、急遽バンカメに買収される交渉を開始した。
 債券発行(レバレッジ)で資金調達してきた投資銀行は、昨夏以来の金融危機(債券危機)を受けて存続てきなくなり、預金を集めて資金調達しているバンカメのような商業銀行の傘下に入らざるを得なくなる傾向が強まっている。

 米国の金融システムは、預金集めの伝統的システムが10兆ドル、レバレッジを使った投資銀行的な「影の銀行システム」も10兆ドルの、合わせて20兆ドルあまりだ。このうちレバレッジ金融の方が、急速に崩壊している。

 その崩壊速度は、私が予測していたよりもずっと速い。私は、米当局は10年ぐらいかけてレバレッジ金融を延命させて少しずつ損切りしていき、その間の米金融は、日本の90年代のような「失われた10年」になり、経済の低成長が続くのではないかと書いた。
                   田中 宇