LEDが持つ驚異の治療効果とその謎

 ある1つの点について、研究者と医師の意見は一致している——赤外線の小さな光に、傷を治したり、筋肉を増強したり、糖尿病の深刻な合併症を改善したり、失われた視力を回復したりする力があるということだ。

しかし、そもそもなぜこのような奇跡的な効果があるのかは、誰にもわかっていない。

 こうしたLED照射器はもともと、NASAが植物の成長を促進する目的で開発したものだ。

現在NASAはこの機器を、無重量状態で過ごす宇宙飛行士たちの筋肉を鍛えるために使いたいと考えている。
ウィーラン博士によれば、680、730、880ナノメートルの波長をもつLED光を1度照射しただけで、筋肉細胞におけるDNA合成が5倍になったという。

 しかし、どうしてこのようなことが起こるのかは謎のままだと、ジェット博士は話す。たとえばジェット博士は、網膜の損傷に関連のある遺伝子を20以上特定しているが、「LEDはそのすべてを変化させた」という。

 「増えたものも減ったものもあるが、いずれも正常に戻った」

 なぜか? ウィーラン博士は、LEDのパルスが網膜の細胞にエネルギーを与え、それで回復が促進されるのだと考えている。
細胞内では通常、ミトコンドリア——細胞内でいわばエンジンのような働きをする小器官——が糖を分解してエネルギーを取り出す。

このプロセスを手助けするのが、電子を運ぶ酵素のシトクロムオキシダーゼだ。

シトクロムは糖から電子を得る。

しかし、LED照射の場合はLEDの放出する光の粒子から電子を受け取るというのがウィーラン博士の考えだ。
つまり、光が食物の代わりをすることになる。