マダニによる吸血

 マダニの吸血後の体重は、吸血前の200倍にもなることがあります。

 マダニは、血液中の栄養素を濃縮し、大量の水分を唾液として宿主に吐き戻します。吸血期間中には唾液吐き戻しと吸血が交互に繰り返されています。

唾液には抗血液凝固や抗炎症活性があり、宿主の反応を抑制しています。

 最初の数日間の遅い吸血の後、急速な吸血が始まりますが、血液の流れと唾液分泌は周囲の細胞の溶解と壊死を加速させます。病原体が伝播されるリスクが高くなるのはこのときです。

 人間にも感染するマダニ媒介性疾患として知られるライム病は、発熱やけいれん、起立不能、歩行異常や神経過敏などの症状を引き起こし、ペットだけでなく飼い主まで苦しむことに…。

 ライム病

 ライム病は、野鼠や小鳥などを保菌動物とし、野生のマダニ(マダニ属マダニ)によって媒介される人獣共通の細菌(スピロヘータ)による感染症である。

 マダニ刺咬後に見られる関節炎、および遊走性皮膚紅斑、良性リンパ球腫、慢性萎縮性肢端皮膚炎、髄膜炎、心筋炎などが、現在ではライム病の一症状であることが明らかになっている。

 ライム病おこす病原体であるボレリアは数種類が確認されている。

北米では主にボレリア・ブルグドルフェリ、欧州ではボレリア・ガリニ、ボレリア・アフゼリが主な病原体となっているが、本邦では、B.garinii、B.afzelii が主な病原体となっていると考えられている。

症状

 遊走性紅斑 インフルエンザ様症状(倦怠感、頭痛、発熱など)

 神経症状(脊髄神経根炎、髄膜炎、顔面神経麻痺)

 循環器症状(刺激伝導系障害性不整脈、心筋炎)

 皮膚症状(二次性紅斑、良性リンパ球腫)

 眼症状(虹彩炎、角膜炎) 関節炎、筋肉炎など