やがて訪れる「オバマ・ショック」の恐怖 朝倉

自国の負債を帳消しにするのがオバマの役割

 膨大な不良債権を抱え、その穴埋めをするためにドルを刷る。その一方では、国債を売り出して借金を重ねる。

今、アメリカが行っていることを永遠に続けることは不可能です。

 ドルがだぶついてくれば価値が下がってインフレ傾向が強まることになります。

 また、国債を乱発すれば買い手がなくなるので金利を上げていくしかありません。その金利を払うために、またドルを刷る。

 しかし、大統領の立場にあるバラク・オバマは国の秩序を守るために何らかの手を打たなければなりません。

 それは生ぬまい方法では効果がないことは明らかで、世界中を驚かすような一手に!

オバマ大統領が打つ手は?

 それでは、ドルが大暴落して悪性インフレが生じたとき、オバマ大統領が取り得る手段とはどういうものでしょうか。

 一つは、デフォルトを宣言するという手があります。つまり、借金の返済が不能であることを世界に向かって宣言するのです。

 もう一つは、現在の貨幣制度を見直し、「逆ニクソン・ショック」ともいうべき、金本位制へ回帰する手段です。

 もちろん、そんなことをすれば世界は再び大混乱に陥ります。

 というのも、ドルの流通量は一九七一年当時とは比べものにならないほど膨れあがっています。

なにしろ、アメリカ政府が保有している金一オンス(三一・一〇三グラム)に対してドルの流通量は一九五九年で五一八ドルだったのに対し、二〇〇六年には三万七八三一ドルまで増えているというデータもあるのです。


 これに対して、金は絶対量が決まっています。
 再びドルと金とをリンクさせ、金本位制に戻したとすれば途端にドルの値打ちは暴落して紙くず同然になることでしょう。アメリカに乞われるままに米国債を買い、外貨準備高の九四%までも米国債で占める日本、同じように米国債を多量に持っている中国は大打撃を被ることになります。

米欧の優位は金本位制になっても変わらない

 金本位制に戻すことで経済が混乱するという点ではアメリカも同じですが、それでも有利な点は、アメリカは世界で最も金を多く保有しているという事実です。

 ヨーロッパの国々、ドイツやスイス、イタリアなども金をたくさん所有していることが分かっています。

 理性的に見えるオバマ大統領が、あのニクソンと同じような無茶な決断をするのかとも思

えますが、ドルが暴落して悪性インフレに襲われた非常事態ともなれば、アメリカは生き延

びるためにどんなことでもするでしょう。