まかり通る巨大な不正

田中宇
 米当局は、昨年9月にAIGに資金援助する際、AIGが貸した金を返済できない場合、政府はAIGの株式の80%を取得して国有化するという約束を取り付けている。

今後、AIGが破綻した場合、国有化される可能性が高い。米政府は金融危機と大不況の中で、すでにGMやシティグループなどの株式を取得して事実上の国有化を進めており、今後、金融危機が再燃すると、米経済のすべての重荷を政府が背負う傾向がさらに高まる。

そして、国有化しても事態は改善できそうもないので、すべてのツケは最終的に米国民と米国債保有者に押しつけられる。

 リーマンが倒産し、AIGも破綻しそうになって、ゴールドマンが保有していたリーマンの債券に関してAIGが引き受けていたCDSの保険金をAIGが支払えない状態になると、ゴールドマンは政治力を使って米当局からAIGに支援金を出させ、その金でAIGがゴールドマンにCDSの保険金支払いができるようにした(当時のポールソン財務長官はゴールドマンの出身)。

巨大な不正である。

      金融危機が再燃するとドル崩壊

 今後、これ以上の金融危機の再燃がなければ、米経済の復活には時間がかかるものの、来年あたりから、ゆるやかな回復を成し遂げ、経済覇権国としての米国の地位は何とか保たれ、基軸通貨としてのドルの地位も維持できる見通しが強くなる。

 しかし逆に、今年から来年にかけてのどこかの時点で、再び金融危機が再燃し、AIGシティグループ、もしくはバンカメやモルガンスタンレーなど、生き残っている大手銀行のどこかが破綻した場合、米当局は事態を収拾することが困難になる。

金融危機再燃による被害は、昨年のリーマン倒産時よりも大きなものになりうる。

連銀はドルの過剰発行、米政府は財政赤字増が加速し、ドルと米国債に対する国際的な信用の失墜が起きる可能性が拡大する。

冒頭に紹介した、AIG株の価値がゼロになるときには、ドルや米国債の価値も大幅に下がるかもしれない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80%