遺伝学の革命 村上和雄氏…98%

 人のDNAに書き込まれている文字の配列を読みとる「ヒトゲノム計画」というプロジェクトが完了したあたりから、この数年、人体をコントロールしているのは、人体の外からの刺激である「環境」によって大きく左右される、という考え方が台頭してきました。

 こうした考え方は、「エピジェネティクス」と呼ばれ、ヒトゲノム解読が完了したあとの、最も新しい理論であり、遺伝学の革命と考えられています。

 そのコントロールするものとは、これまでの科学的薬品や特定の食べ物を指さず、「環境」と呼んでいるのには、わけがあります。

 それは必ずしも、物質分子シグナルだけではなく、エナジーシグナルのすべてのものが、遺伝子をオンにするものに入るからです。磁気や光、周波数、強い思いや、情熱、愛、歓喜、笑い、ことばなどがすべて含まれるのです。

 エピジェネティクスの第一人者、ブルース・リプトンは、エピジェネティクスの端緒を開いた人であり、私たち人間を、約六○兆個の生命からなる生命の共同体であるとしています。

「一つの細胞のあり方が、環境のいかんいよって左右されるのであれば、何十兆個もの細胞集団である人間もそれと同じはず。

細胞の一つの状態を決めるのが遺伝子ではないように、私たちの人生も遺伝子が決めるのではない」として、身のまわりのすべての環境と、こころのエネルギーである思いや、考え、情熱などが、遺伝子のスイッチを入れ、人生を変えると説いています。

 リプトンは、人は自らの人生をいかようにでも創造できる存在であり、地球の未来のよりよい共同創造者であると主張しました。

       細胞生物学と量子物理学

 これまで両者は、まるで相容れない学問であったのです。遺伝子のスイッチを入れるものは、からだを取り巻く、大自然の空気、磁気、波動、音楽やことば、そして思い、思考なども、大きく影響していることが、証明され始めたのです。

 つまり、からだの中の情報からだけではなく、「環境」こそが、遺伝子情報のスイッチをコントロールする大きな要因であるというのです。

 人間とは、環境からエネルギーや情報を得て生きている「地球探査機である」と、リプトンは言います。ですから、たえず細胞のレセプターを活性化しておく必要があります。

 リプトンの理論は私が、「こころと遺伝子は、相互作用する:と、一貫して言ってきたことにつながっていきます。

 何を思い、どういうこころで一日一日を過ごすかがとても大事なことになるのです。その思いの質が、生きる質であり、または生きる量と関係していくのではないでしょうか?思い、すなわち、信念が人生をコントロールするといっても過言ではありません。
 私たちは、思いをただし、明確にすることで、運命の支配者になれるのです。

 人間の細胞は環境によって変わる。変えることができるのだと。

 その瞬間、医学の現場で生命の本質について、それまで教えられてきたこと、信じ込んできた信念が「見事に打ち砕かれた」ことを、彼は、話してくれました。

一九八五年から、こうしてリプトンのまったく新しい研究が始まったのです。そして、外部から多くのシグナルや情報を受けとり、それを処理し、総合して細胞内に伝えるという意味で、細胞膜は細胞の脳の機能を持つと考えるにリプトンは到ります。

とくに、これまで細胞生物学とは相容れなかった、量子物理学の概念を、細胞の機能の研究にリプトンが果敢に取り入れたことはユニークです。

 一連の実験の歳月を経て、リプトンは人間の遺伝子をコントロールするものとは、からだの外からのエナジーシグナルがその大部分であることに気がつきます。

 私たちは、大きな意味で地球の生命と共生している生命共同体であります。その生命とつながりをもたらすものは、まさに目に見えない、量子的なものであり、振動やエネルギーなどであります。

音や、波動、磁気、雰囲気、景色や風、人の思いやこころなど、それらが人の個々の細胞にシグナルを発信しています。

 私たちはそのシグナルを受信して、必要な遺伝子のスイッチをオンにします。遺伝子情報そのものが、人をコントロールするのではないという点が新しい概念です。

 リプトンによると、人体の中で、目に見えないエナジーシグナルは、食べ物や科学的物質などの、目に見える物質的シグナルと比較すると、なんと一○○万倍のスピードで、からだのコンティションに影響を与えるといいます。