ハイチを救う「貧者の銀行」

 ハリウッド映画も顔負けの迫力だった。1月22日午後、現金200万ドルを積んだ装甲車がマイアミのJPモルガン・チェース銀行を出発。
普通のオフィス用収納箱に収められた札束はホームステッド空軍基地でC17輸送機に積み替えられた。行き先はハイチだ。

 札束は翌23日の夜明け前、ハイチでマイクロファイナンス(無担保小口融資)を手がける金融機関フォンコゼの34のオフィスにヘリコプターで届けられた。
1月12日の大地震で首都ポルトープランスにある9つの商業銀行が大打撃を負ったのに対し、フォンコゼの42の代理店のうち半数は地震後4日で再開した。

 マイクロファイナンスが大きな注目を浴びるようになったのは、その草分け的存在であるグラミン銀行の設立者ムハマド・ユヌスが06年にノーベル平和賞を受賞してから。ユヌスは商業銀行に門前払いを食らうようなバングラデシュの貧しい人々に10〜30ドルといった小額融資をすることで社会を変えられると考えてきた。

 今やこうした小額融資を受けている人は世界で7500万人、融資残高は390億ドルに上るとされる。最近では世界銀行米州開発銀行(IDB)、さらには大手商業銀行までマイクロファイナンスの可能性に注目し始めている。

 さらにハイチ大地震をきっかけに、災害救援というマイクロファイナンス機関の別の役割がクローズアップされることになった。