腸内細菌

日本人だけがもつ「消化メカニズム」とは
 日本人にとって、寿司はかなり特別なパワーの源らしい。

 英科学誌ネイチャー4月8日号に掲載された研究によれば、ノリなど紅藻類に含まれる多糖類を消化する酵素が新たに発見され、その酵素を作る遺伝子は日本人の腸内にあるという。

 日本人と北米人の腸内細菌を比較したところ、ノリを消化できる遺伝子は日本人の腸からしか発見されなかった。つまり日本人は寿司などによく使うノリからエネルギーを吸収できるが、アメリカ人はできない。

 なぜ日本人はノリを消化する遺伝子を手に入れたのか。日本人は海藻を大量に食べるので、多くの海洋細菌を摂取するからではないかと研究者は推測する。細菌は未知の相手にDNAを移転させることが可能だ。

海藻を食べた日本人の腸に海洋細菌がすみ着き、腸内の細菌にノリを消化できる遺伝子を移転したのかもしれない。

 とはいえ、今からでも大量のノリを食べればこの遺伝子が手に入るわけではない。もともとはこの海洋細菌の「宿主」に適した腸を持つ日本人の腸内細菌に、海洋細菌のDNAが1度移転したと考えられる。ひとたび1〜数人の町内で海藻を消化できる遺伝子が安定的に存在するようになると、周囲の人々にも広がり、定着する。