国民の12%が食料の配給を受けているアメリカ        ベンジャミン氏  90%


 2008年に2800万人を超えた受給者数は、2009年9月に前年同月比で558万人増加して3700万人を突破。現在も1日2万人のペースで受給者数が増え続けているという。

じつに国民の12%もの人々が食料配給を受ける先進国は、地球広しといえどアメリカだけだ。とくにGMの破綻に象徴される製造業の衰退は激しく、その影響で自動車部品製造の中心地であるオハイオ州では、目に見えてフードスタンプ受給者が増加している。ウッド部で、77%、ヴァンワート郡で84%。もちろんこれは一例に過ぎず、全米で受給率が上昇しているのだ。

 国民の12%が食料配給を受ける一方で、ウォール街の高額ボーナスは復活。低空飛行を続ける実体経済と、マネーを追いかける金融資本家たちが跋扈するウォール街と乖離は、ますます大きくなっている。

    まやかしにすぎないGDPの急回復

 また、フードスタンプを受ける人々の9割近くが、4人家族で年収2万2000ドルとされる貧困ラインを下回る生活をしている。しかもフードスタンプの受給者のうち、600万人は収入のない極貧ラインで生きる人々だ。

 つまり、3700万人を越えた受給者の約50人に1人が無収入で、1ヵ月100ドルか200ドルのフードスタンプで食いつないでいる。さらに、ニューヨーク・タイムズ紙の報道によれば、失業者で現金収入がなく、福祉手当もなく、失業手当もなく、年金もなく、子供手当てもない人々の数は2007年から2009年の2年間で50%増大したという。

      35%以上ある実際の失業率

 全米のU6はすでに2009年3月時点で15・6%に達しており、2010年に入って20%を突破。そこに職を失った一般企業で働いていたビジネスマン、最低賃もしくはそれ以下で働く労働者へと転落した人の数を加えると、その数字は35%にも達する。さらにいえば、財政が悪化しているカリフォルニア州をはじめ、ミシガン州オレゴン州などのU6は全米平均よりも高い数値で推移している。

 35%ということは、じつに5人に2人が満足な職を持っていない状態で暮らしているという計算だ。しかも、全米の求人者数は2009年11月の時点で240万人。有効求人倍率で6・4倍となり、6,7人の失業者に対して1つの仕事しかない状況が続いている。

 こうした状態はいつ改善するのかという国民の声に対して、オバマの経済顧問であるローレンス・サマーズは「我慢できないほどの高い失業率が、今後、何年も続くだろう。経済は回復しても、失業は減らない」と言い放っている。

 すでに財政破綻が近づいている州は、カリフォルニアだけではない。現在、全米50州のうち39州が大幅な財政赤字に陥っており、財政破綻を宣言する可能性が出ている。

特に不動産バブルに躍っていたネバダ州やフロリダ州テキサス州などは、カリフォルニア州と同じく金融危機による税収減の直撃を受けている。

 リーマンショックに端を発する金融危機によって、世界の海運需要は激減。とくにアメリカへ向かう船の数は減り、バルチック海運指数も最盛期の10分の1まで下がっていった。2010年に入って持ち直してきているが、その理由はアメリカを抜きにした貿易の形ができあがってきたからだ。

 では、なぜアメリカ抜きの貿易とならざるをえなかったのか?その裏には2種類のドルの存在がある。

     ・国際通貨として使うことのできるドル

     ・アメリカ国内でしか役に立たないドル 

じつは、2008年の金融危機以降、FRBが刷っているドルは国際通貨として各国から相手にされていない。その結果、アメリカの輸入は年率で51%下がり、輸出も年率44%下がった。

 なぜ民間企業がドルを印刷・管理しているのか

 彼ら金融資本家は通貨発行件を手中に収め、金融市場操作をすることでアメリカの支配を目論み、成功させた。そして、現在もFRBの株主はJ・Pモルガン・チェースとシティ・バンクなどの金融資本家であり、正確な数字は明かされていないが、両銀行が50%以上の株を所有しているとされる。

 つまり、ロスチャイルド家、ロックフェラー家、モルガン家という金融資本家がFRBを事実運営しており、そこに石油・軍産複合体の力を背景にのし上がったパパブッシュの一派が加わっている形だ。

 民間企業である以上、誕生の瞬間から組織は利益を求めて走り始める。

 カネを稼ぎ、株主に還元する。これがまさにアメリカが世界に押し付けようとしてきた金融資本主義の根幹を成すルールであり、当然ながらFRBも同じ行動原理で動いている。

つまり、基軸通貨ドルを発行する組織は利益を出すためのビジネスをしているのだ。中立の立場を取るよう法的な規制が行われているわけでもなければ、FRBに平等を重んじる伝統があるわけでもない。

 それでもドルが基軸通貨の地位につくことができたのは、前述の通り金と一定の割合で交換すると保証された兌換紙幣だったからだ。

1971年のニクソン・ショックで金との交換が保証されなくなり世界に動揺が広がるが、FRBはその代わりとばかりに石油・軍産複合体勢力と結託・石油の海運の安全をアメリカ軍が守ることで、石油の取引通貨をドルに限定する作戦に出る。

 こうしてドルの石油本位制を作り、世界中にドルをバラまき続けてきた。そして、こうしたドルを使った儲けのカラクリが破綻しそうになったとき、必ず発生するのが戦争だ。いつも仕掛けるのはアメリカで、戦争状態になると軍事力が弱い国は自国の通貨をドルに替えようとする。


 彼らはもう何十年もこうやって単なる紙切れであるドルを好き放題に刷りまくり、世界中からコモディティと富をかき集めてきた。それがこの半世紀、世界の裏側で行われてきた支配の構図なのだ。