デフレと円高で日本経済はさらに強くなる 増田悦佐氏 85%

 日本経済新聞に代表される経済メディアを見れば、「最近の日本経済の成長は外需依存度が高くて脆弱な基盤に立脚している。輸出先の経済次第ですぐ吹き飛んでしまうような危うい成長だ」という議論ばかりが目立つ。

 不思議なことに、日本のメディアはほんの少しでも日本の良さを伝える海外からのニュースについては反論するのではなく抹殺する。いや、「ほんの少しでも」というのは間違いで、大きなニュースになればなるほど握りつぶしてきた。

日本ほど輸出依存度の低い国はない! 

メディアの誤報のなかでもワースト3にランキングされるものに、日本は輸出に依存し、内需拡大がまったくできていない、という報道がある。誤解というか無知も甚だしい。

 日本の強さは、広大で底の深い内需市場にあることをご存じないのだろう。今後、もし、こういう記事を見かけたら、記者の無知、メディアのレベルの低さ、あるいは謀略、陰謀を疑ったほうがいいかもしれない。
 日本ほど輸出依存度の低い先進国は類を見ない。 

日本国民一人当たり貿易額(輸出額と輸入額の合計)は、国民所得の二四・七%である。同じ数字を西欧諸国について計算してみると軒並み四〇〜七〇%台である。

たとえば、ドイツは七六・七%、イギリスは五八・一%、イタリア四八・二%、フランスは四八・〇%となっている。
日本経済の輸出入の差額=貿易黒字のGDPに占めるシェアでいえば、わずか一〜二%にすぎない。

これがいますぐゼロになったとしても日本経済はビクともしない。

中国の貿易依存度が五〇・六%で、輸出二七・九%、輸入二二・七%となっているのとは、まったく構造が違うのだ。

 日本企業は技術的に難しく、ほかの国ではまったくできない、あるいはやればものすごくコストがかかることを率先してチャレンジしている。そういう製品や技術ほど、世界が豊かになればなるほど、受け入れるマーケットが広がっていくからである。

いまは中進国、発展途上国で売れている家電製品は韓国製や中国製がほとんどである。だが、GDPが増え、国民が豊かになるにつれて、ほんとうにいい商品、いいサービス、最先端技術を使ったものが欲しくなると、日本製品にスイッチしたくなる。

特許輸出も日本は世界一! 

一国の技術力がどれだけあるのかないのか、そのモノサシとして特許数の多寡もなかなか頼りになる。

 日本は一九九六年以降、技術分野(=特許)の貿易収支でも一貫して輸出超過である。アメリカ、ドイツも含め、世界のすべての国に対して特許の国際貿易は完全な「輸出超過」なのである。

 この黒字額は年々増加し、二〇〇七年実績では一兆七七〇〇億円になっている。同年の製品貿易収支の輸出超過は一一兆円。ということは、ハードに対してソフトウエアが二〇%占めていることがわかる。

少子高齢化はメリットのほうが多い 

ほとんどの日本人が、「少子高齢化、人口縮小は悪いこと」と決めつけている。

実際は、少子高齢化についていえば、これはもう一〇〇%よいことで、そうなれない社会のほうがかわいそうな社会だということだ。

 その点で製造業からサービス業への転換が順調に進んでいて、製造業の中でもソフト的な付加価値の高い製造業に特化する経口が顕著な日本経済は、有利だ。

人口規模が縮小する中でも一人当たり国内総生産を高く保ちやすいからだ。

 これはまったく大間違いで、少子高齢化社会のほうがはるかに生産効率が高くて人間を幸福にする社会なのだ。