日本の大復活はここから始まる!三橋貴明氏 75%


 不動産バブルの崩壊で世界中に不況の嵐を招いた当のアメリカは、デフレに陥らないために財政出動と金融緩和を盛んに進めている。減税の継続や量的緩和第二弾、いわゆるQE2だ。同じことを日本もやればいいのである。それは日本にとって一石三鳥になる。まずデフレから脱却できる。

さらに、円安を招くので輸出企業の競争力が増す。そして、税収が増え、最終的には名目GDPが増えるために、財務省流に言えば、「国の借金」も対GDP比で目減りし、財政健全化も達成できるのだ。詳しくは後述するが、これらのデフレ対策は至極当たり前の政策なのだ。だからこそ、アメリカもやっている。

 しかし、日本の歴史上最高のインフレ率は、一九四六年のおよそ年三六○%である。一九四六年といえば敗戦直後で、日本中の都市という都市が焼け野原になっていた時期だ。生産設備の大半が破壊され、供給能力が日本の歴史上もっとも落ち込んだ時期にもかかわらず、三六○%程度、つまり物価が一年で四・六倍になる程度のインフレで済んだという話なのである。

 しかし、ロシアやドイツは日本より遥かに人口が減少しているのに、経済成長を続けている。


「日本経済は輸出依存」のウソ


 輸出依存度とは、「財の輸出額÷名目GDP」、つまり経済全体の規模に比べて製品輸出がどのくらいを占めているか、で求められる。

 他の主要国はどうだろうか。日本より低いのはアメリカ、ブラジルだけで、日本は世界の主要国の中で三番目に輸出依存度が低い国なのだ。もっとも、アメリカはご承知のとおり世界最大の貿易赤字国だ。ドイツは依存度が三○%を超えている。中国も以前は三○%近かったが、直近ではやや低下して二五%程度。ロシアもほぼ同じ水準だ。韓国に至っては、四三・六四%である。しかし、日本はわずか一○・七一%なのだ。

「耐久消費財の輸出が日本を支えている」のウソ


 粗っぽく言えば、輸出の割合が一○%だから、つまりGDP全体では、一○%の一六%で一・六%ということになる。自動車に限って言えば輸出全体の一○%を占めているため、日本のGDPのおよそ一%が自動車の輸出によって、○・六%が家電などその他の耐久消費財によって支えられているということになる。

日本の輸出の要は資本財だ
 

そもそも日本の主役は、耐久消費財ではないのだ。資本財である。耐久消費財とは、消費者が買う財、つまりテレビなどの家電製品や自動車である。一方、資本財は企業が買う財のことだ。企業が生産するために、購入する部品や設備のことである。

具体的には、産業用ロボット等の生産設備、半導体シリコンウエハー、LEDパネルなどになる。

 端的に言えば、国内経済、つまり内需が小さい国ほど輸出依存度が高い。考えて見れば、分母が小さくなるのだから当然の話である。しかし、アメリカやブラジル、日本のように、巨大な内需を抱えている国は、輸出依存度が低い。元々、日本は内需大国だったのだ。

 しっかり財政出動し、金融緩和をして、国内市場を拡大し、デフレから脱却すれば済む話である。日本のインフレ率上昇は円安を招くのだから、耐久消費財メーカーにも追い風になるわけだ。

    日本は世界に誇れる「自己完結型経済」

 GDPにおける内需を説明しておくが、内需とはGDP全体から「純輸出」を差し引いたものである。日本の弱点である資源の問題が、海中からウランが採れるようになったり、メタンハイドレートを掘れるようになったり、藻を培養して石油を採れるようになれば、もはや日本経済はボルトネックなしのオールマイティー経済になってしまう。

 それにもかかわらず、この政策が悪だとか善だとか、現下の状況を踏まえずに語られることが、話をわかりにくくしてしまう。ある政策、例えば積極的な公共投資は、現在では善であり、インフレが進行しそうなときには悪となる。

増税は、現在は悪であり、将来インフレが進行している局面では善となる。
永遠に正しい政策等ありえないのだ。