菅政権の終わりと米国の危機

田中宇

 菅直人首相がいよいよ辞任しそうだ。日本のマスコミは1カ月以上、菅に辞任圧力をかけ続けてきた。菅は、前任の鳩山由紀夫に比べると、対米従属の傾向や、官僚に対する従順さが強かった。だからこそ、官僚機構とその傘下のマスコミは昨年6月、鳩山を辞任に追い込み、菅への交代を支持した。

しかし結局、菅の1年間も、在日米軍問題を主軸とする日米関係は膠着状態で「強化」されず、沖縄の基地問題も、地元の基地反対の意志が強まっただけだった。

 沖縄への米軍駐留は日米同盟の大黒柱だ。米軍駐留がなくなれば、日米同盟は米国の側から希薄化されるだろう。
日米同盟が希薄化されると、官僚機構が「米国(お上)の代理人」として政治家の上に君臨してきた戦後日本の権力構造が崩れ、政治家が強くなり、官僚機構が弱体化して、日本の権力が官僚主導から政治主導へと転換する(投票で選ばれていない官僚の力が弱まる分、真の民主主義に近くなる)。


日本が忘れた普天間問題に取り組む米議会 

米政界は、財政赤字の上限引き上げに何とか合意したが、その直後に米国債が格下げされた。いずれ市場で米国債が売れなくなっていく事態(米国債金利の上昇)が起こりそうだ(今はまだ起きていない)。

そうなると、米政府は国債を売りにくくなって財政難がひどくなり、辺野古移設やグアム移転を根本から見直さざるを得なくなり、米上院が提案したような、沖縄の海兵隊をハワイや米本土の既存施設まで撤退させる計画へと変更される。

 米国債の格下げは、覇権国としての米国の格下げだ。それは日本にとって、日米同盟の希薄化を意味する。日米同盟の希薄化は、官僚支配の終わりだ。

 官僚機構は、自分たちの権力を守るため、米国が崩壊しつつあるのも無視し、是が非でも対米従属を続けたい。米国が望む以上、TPPへの加盟も推進せねばならない。

 しかし、民主党内で依然として強い小沢一郎は、対米従属からの離脱や中国との協調強化を自らの戦略としている。

誰が次期首相になるにせよ、官僚機構やマスコミにたたかれないよう、表向き日米同盟の強化や中国批判を掲げても、本当は小沢一郎のお眼鏡にかなった人物で、実際に首相になってみると沖縄基地問題で強硬姿勢をとりたがらないといったシナリオがありうる。

米大手銀行で次に倒れるのはバンカメ? 

米国債の格下げが今後、株価の急落から金融危機に発展した場合、最初に破綻するのは米最大手銀行の一つバンクオブアメリカ(バンカメ)になるかもしれない。

バンカメは08年夏のの金融危機時に、米大手不動産金融機関のカントリーワイド社を買収し、自社が抱える住宅ローン債権を急増させたが、その後も住宅市況は悪化を続けた結果、バンカメの住宅ローン債権の半分が不良債権化している。バンカメの危機は昨年から指摘されていた。