デフォルト・モード・ネットワークとは

結論を大雑把に言ってしまうと、次のようになるだろうか。われわれの脳は意識して何かをしていない時にも活動していて、意識している時の20倍ものエネルギーを消費している。

このベースラインの活動を示す領域はデフォルト・モード・ネットワークと名付けられ、記憶に関与したり、将来の出来事への準備に関っている。さらに、アルツハイマー病、うつ病自閉症、また統合失調症において、DMNと重なる領域に異常が見られることから、DMNの異常と病気が結びつく可能性も示唆されている。

 DMNは意識的な行動をするうえで重要な役割を果たしており、ある実験では、DMNの活動を観察することによって、被験者がミスをするかどうかを30分前に予測できたという。さらに興味深いことに、DMNの異常がアルツハイマー病やうつ病などの神経疾患とも関係するようだ。

アルツハイマー病患者で顕著な萎縮が見られる脳領域は、DMNを構成する主要な脳領域とほとんど重なっている。安静時の脳活動を研究することによって、意識や神経疾患を理解するための新たな手がかりが得られるだろう。
 私たちに最も身近でありながら、謎に包まれているのが私たちの脳です。脳はサイズの割に大量のエネルギーを使っていますが、全体の90%以上が、いわば使途不明なのです。

 その謎が今、解かれつつあります。何もしていないでぼんやりしているとき、脳の一部で非常に重要な活動が行われていることが明らかになりました。この安静時の脳活動、これから起こりうる出来事に備えるため、さまざまな脳活動を調整して“スタンバイ”させる働きがあるようです。

 さらに最近の研究によって、この脳活動が私たちの意識やアルツハイマー病やうつ病などの神経疾患にもかかわっていることがわかってきたようです。