科学から芸術へ五井野 正氏

 
今回の福島原発事故の場合は悪いことをした奴が先ずすることは「データを隠す」ということにつきるであろう。
 例えば、福島原発事故があった3月11日から1週間位のモニタリングポストのデータや原発付近の放射線の値、さらに事故当日の17時頃からスタートしたSPEEDI(緊急迅速放射能影響予測システム)による1時間ごとの放射線拡散試算図などがしばらく隠され、また、メルトダウン地震による早期の原子炉の破壊などの事実も曖昧さで隠し通してきたなどがある。

     原発事故の原因は津波でなく地震 

このように、地震が起きてから水素爆発するまでの1号機の経緯を探ってみると、事故の一番の原因は地震であったことがわかる。

つまり、地震によって原子炉内の配管が壊れ、冷却水が噴出して、放射能を周囲に拡散するだけでなく、圧力容器の冷却水を失ってメルトダウンしたことが時間の流れの中で誰にでも容易に理解されるはずだ。 さらに言えば、冷却用の電源があっても冷却水が漏れてなくなってしまえば、イタズラに放射能汚染水を拡散するだけになり、少しでも電源が止まったり冷却水の補充ができなくなれば、すぐにでもメルトダウンすることになる。

 ところが、東京電力は「地震の後に来た津波が2002年に想定した5・7mを超える未曾有の大津波だ」として事故の原因を全て想定外の津波に負わしたのである。

 しかしながら、津波に関して言えば、三陸地震で千人以上の死者を出した869年の貞観津波が古文書に書かれていることが今回の大震災前から指摘されており、また1500年ごろに東北から関東を巨大津波が襲った痕跡を産総研のチームが見つけて政府にも震災後に知らされ、原子力安全・保安院は「今後、当然検討する」と答えていたのである。