(重症)筋無力症について

●眼の回りの筋肉
まぶたが落ちてくる、ものが二重に見える、斜視シャンプーが目にしみる、目が疲れる。

●口の周りの筋肉
ものがかみにくい、のみこみにくい、つばがあふれる、食べたり飲んだりするとむせる、しゃべりにくい、鼻声になる。

●顔の筋肉

表情がうまくつくれない、笑おうとしても怒ったような顔になる。

●手足の筋肉
持ったものを落す、字が書けない、立てない、歩けない、階段が昇れない、洗濯ものがほせない、おふろで頭が洗えない。

●呼吸筋
息がしにくい。

心臓や腸の筋肉は侵されません。・・・・・・・・・心筋はダメ

重症筋無力症の人の筋肉が弱くなるのは、体の中に抗アセチルコリンリセプターという抗体ができ、これが筋肉の膜のアセチルコリンリセプターに結合するためです。

アセチルコリンリセプターは、神経からの刺激を筋肉の細胞に伝える役割をしているので、重症筋無力症の人は神経からの刺激が伝わりにくくなっているのです。

我々の体は何百万もの抗体を作る能力があり、たとえばカゼをひいたときには、ウイルスにたいする抗体を作ってカゼをなおすのに使っています。

重症筋無力症の場合は、なぜかわからないけれども自分の体の一部であるアセチルコリンリセプターに対する抗体ができ、これが病気を起こしているのです。つまり、自分で自分を病気にしているわけです。

この、自分の体にたいする抗体による病気を自己免疫疾患といい、重症筋無力症もそのひとつです。

アセチルコリンリセプター抗体陰性の重症筋無力症もある。

たとえばプレドニンを10錠飲んで症状が全くないとします。
しかしこの状態だと症状をコントロールするのに必要なプレドニンの最低量より多く飲んでいる可能性があります。

それは薬を減らしてみて、症状がでるとか、抗アセチルコリン受容体抗体が上昇するかどうかで分かるわけです。
症状は変遷するので、いま10錠必要でも、半年後には6錠で十分かもしれません。

必要最低限のプレドニンを投与するためには、常に薬を増やしたり減らしたりしなくてはなりません。

それが難しい場合は必要以上の薬を飲むことになり、その副作用で苦しむ場合が出てきます。

胸腺腫について

胸腺腫はリンパ球を作っている胸腺の腫瘍です。

胸腺には他の腫瘍も発生しますが、胸腺腫はリンパ球の生成に重要な役割をしている胸腺上皮細胞の腫瘍で、胸腺腫のなかにはたくさんのリンパ球があるのが特徴です。
下の写真は胸腺腫の顕微鏡写真で黒く丸く見えているのがリンパ球です。

このリンパ球は腫瘍ではなく正常のリンパ球です。

リンパ球のまわりに腫瘍化した胸腺上皮細胞があります。

そもそもなぜ重症筋無力症になるのか

胸腺腫のある重症筋無力症の患者さんは胸腺腫でのT細胞分化が正常胸腺とは異なるため、自己抗原に反応するT細胞が成熟してしまうので、いろいろな抗原に対する抗体を作ってしまい、その一部として抗アセチルコリン受容体抗体が産生されるため重症筋無力症になると考えられます。

ウイルス等が感染し、それに対する免疫反応が起き、それがたまたまアセチルコリン受容体に反応することで重症筋無力症が起きるという説が根強くあります。

もしそうだとすると、特定のウイルスとの関連があるべきですし、免疫学的に考えると特定のHLAとの関連があるはずです。

また大きなアセチルコリン受容体分子のなかでも特定の部位に対する抗体が多くみられるはずです。

これらのことはいずれも実際の患者さんではみられませんので、ウイルス等による交叉抗原による発症は免疫学的にみて考えにくいと思います。

☆HTLV−Iウイルスが問題です。

重症筋無力症の原因

神経末端部のしくみについて(はじめに)

 神経末端部では、神経と筋肉はつながっているのではなく、隙間があります。脳からの命令はこの隙間を橋渡しされます。大脳から送られた運動伝達物質(アセチルコリン)は神経から放出され、それを筋肉側にあるアセチルコリン受容体(アセチルコリンレセプター)が受け取ります。すると筋肉が収縮します。

 筋肉が縮んだままではこまりますので、これを元に戻す働きがあります。この隙間にはコリンエステラーゼという酵素があり、アセチルコリンを壊します。すると脳からの命令が消えて、筋肉の収縮が元に戻ります。こうして私たちはなめらかに筋肉を動かしています。

筋無力症は自己免疫性疾患

 私たちの体には、ウイルスなどが入って来た時に抗体を作ってそれをやっつける免疫という能力があります。例えばインフルエンザにかかった時にはインフルエンザウイルスに抵抗する抗体を作ってインフルエンザを治します。
 重症筋無力症では、この免疫の働きが何かの原因で故障し、間違った抗体を作る命令を出します。その命令によりリンパ節で抗体を作ります。この抗体が自分の体の一部(アセチルコリン受容体)を攻撃し、病気を起こしています。

 この「間違った抗体を作る命令を出す」のは胸線の中で起きていると考えられていますが、詳しいことは明らかになっていません。

原因は間違った抗体

 重症筋無力疾患者では、間違って出された命令によってリンパ節で作られた抗体(抗アセチルコリン受容体抗体)が、アセチルコリン受容体についてしまいます。体の中にはこの抗体を壊すものはないので、自然に壊れるまでついたままです。すると次の現象が起きます。

アセチルコリン受容体に抗体がついているために、アセチルコリンを受け取ることができない。(脳からの運動の命令が届かない)

抗体がついていると、アセチルコリンで受容体が壊れてしまう。(脳からの命令を受け取るものがなくなる)

従って体験的にカルテは

1、全身の神経筋肉接合部のアセチルコリン受容体にEg入れ、そこから抗アセチルコリンリセプター抗体をぬく。及び抗核抗体をぬく。

2、胸腺之 腫瘍のEgぬく。
    及び両方からHTLV_Iウイルスぬく。

3、縦隔・心筋之抗核抗体ウイルス等ぬく。