CIA ティム・ワイナー 西洋文明史上最強の国が、いかにして一級の謀報機関を作ることに失敗したのかが、綴られる。そしてこの失敗は、アメリカの安全保障を危機に陥れている。

 エドワード・ギボンは
ローマ帝国衰亡史」のなかで、歴史は「そのほとんどが人類の犯罪、愚行、不運の登記簿にほかならない」と書いている。CIAの歴史は、勇敢、狡猾な行動とともに、愚行と不運に満ちている。

海外ではつかの間の成功と、長く後を引く失敗の物語にあふれている。国内では、政治闘争と権力闘争の記録である。うまくいったときは人命や財産を救うことができたが、失敗したときはその両方が失われた。失敗によって、多数のアメリカ人兵士や外国の協力者が命を落としたのである。

 CIAの秘密工作はおおむね闇夜に鉄砲を撃つようなものだった。実行して、現場で間違いを犯すことを通じて学ぶ、というのがCIAの唯一のやりかただ。

ところが、あろうことかCIAは海外での失敗を隠し、アイゼンハワー大統領にもケネディ大統領にもうそをついた。ワシントンでの自分たちの立場を守るためのうそだった。

冷戦時代に支局長を務めたドン・グレッグに言わせると、本当のところは、最盛期のCIAの評判は高かったが、実績はひどいものだった。