世界のお金は日本を目指す岩本 沙弓氏 

フーチ 90%
 なぜ円が買われるのか?通貨の裏側に隠された本当のこと!

一般の経済評論、国際金融の解説であれば私などよりも優れた分析はいくらでもあります。私の場合はあくまでも現場で見て・聞いて、そして実際に国際金融相場で取引をしてきた際の一参加者としての目線が基本となっています。
それは特に一般の国際金融論や経済学からはかけ離れているため、突飛に映ることもあるかもしれません。

 実際に「そんなことは論理的にありえない」とご指摘を受けたこともありますが、理論で片づけられればこの世はなんと楽なことでしょう。そうはいかないところに、経済分析の難しさがあると思われます。

 日本がこの二○年で変化したこととして、フィングルトン氏は次のように指摘しています。

? 平均寿命―七八・八歳から八三歳まで四・二年も伸びた。日本人の食事は以前よりもずっと欧米化していることから、長寿化の要因は「食」ではない。「医療」が鍵である。

? インターネット・インフラ―インターネット回線の速度(通信速度)の世界最速都市トップ五○のうち、三八都市が日本だった。アメリカはたった三都市。

?通貨―一九八九年末(バブル崩壊)時点に比べて、日本円は対米ドルで八七%、対英ポンドでは九四%も価値を高めただけでなく、昔から通貨の優等生とされてきたスイスフランに対してまでも、円は上昇し続けている。

?失業率―日本の失業率四・二%はアメリカの半分でしかない。

?建築―五○○フィート(一五二・四メートル)以上の高層ビルが東京では八一棟建設された。ニューヨーク六四棟、シカゴ四三棟、ロサンゼルス七棟。

?経済―日本の二○一○年の経常黒字は一九六○億ドルで、一九八九年当時の金額の三倍。かたやアメリカの経常赤字は九九○億ドルから四七一○億ドルに膨張した。

中国の躍進で勝者はアメリカ、敗者は日本になると言われてきたが、実際には日本の対中輸出は一九八九年の一四倍以上に増え、日中の二国間貿易は均衡を保っている。

?その他―整備が行き届いた空港。小奇麗(質がよいのも含め)な服装。街にはポルシェ、アウディ、ベンツなどの最新鋭車が勢揃い。至れり尽くせりで甘やかされているペット。最新機能付きモデルが次々と登場する携帯電話等々。

 フィングルトン氏は、日本経済が成功した背景の一つとして、大量生産・大量消費を前提とした従来の製造業から脱却して、高品質な製品作りに資本や技術を注入したことが貿易収支の増加にも密接につながっていることを挙げています。 そして日本が「敗者」であるというのは、よく言えば神話、悪く言えば作り話であり、むしろ日本経済を理想的なモデルとして見習うべきではないか、と結論付けています。 

それから数ヵ月経った二○一二年五月以降、クルーグマン教授は前言を撤回するような発言を繰り返し行っています。ニューヨーク・タイムズ紙のコラムにも「自分を筆頭に、アメリカの経済学者たちは日本に対して謝るべきである」とまで書いています。加えて、最近では次のようなコメントも残しています。

「『日本のようにわれわれもなってしまうのか?」と尋ねられたら、「なれるものなら、日本のようになりたいものだ」と私は答えているんだ』。これは、クルーグマン教授の“懺悔”のほかなりません。

 この国内で使い切れない余剰金額は一一年時点で世界一であり、なおかつ二一年間連続して、日本は世界一の立場を維持しています。こうして積み上げてきた実績は、私がこれまでも日本が世界一裕福である証左の一つとして取り上げてきたものであります。

     日本国債のデフォルトはあり得ない 

政府に国債という負担が増えても、それを保有する国民の資産も同時に増えるので、日本全体でみれば貸し借りが帳消しになるわけです。「政府の負債=国民の資産」という考え方です。政府の側だけを見ると一○○○兆円の借金なのですが、それと同じくらい(九二%)の資産を日本国民が保有していることになります。

  円高は悪」の認識をつくり上げたのは誰か
 円安のステージでドル介入はできません。円高でなければドルを買うのは正当と日本国民を納得させる理由が出てこないのです。そこで、少しでも円が高いほうに動きだせば、「円高は悪だ。為替介入して、調整しなければならない」と叫び、為替介入をしやすい環境に導くことができます。

 アメリカの減税と重なる為替介入
 ブッシュ・ジュニアの時代には二○○一年と二○○三年の二度にわたり大減税を実施しました。減税ができるというのは、その代わりにどこかに財源が存在していたということです。

 これまでの日本の介入実績のなかで、ドル買いの金額が突出して多いのは小泉政権下でのことです。二○○一年から二○○四年までの合計は四二・三兆円にも上ります。

 二○○○年までの数十年間の累積が四○兆円でしたので、わずか四年で二倍にしてしまったわけです。ここで買われた米ドルが米国債券の購入に回りますから、アメリカの財源になったのは言うまでもありません。 

 韓国のサムスン製品がすばらしいと賞賛されるのですが、その主要部品は日本製品で占められています。

 それは韓国の貿易の内約に如実に表れています。韓国の場合は中国、日本、アメリカ、欧州が主要貿易相手であり、中国、アメリカ、欧州に対しては黒字なのですが、対日貿易だけはずっと赤字を記録しています。

 これは日本から部品を多く輸入しているからです。

 ウォン安を背景に世界中に攻勢を仕掛ける韓国企業と、壊滅状態の日本の大手家電メーカーと構図はシンプルでわかりやすい上、いつもの「円高は悪」の議論には格好の材料ではあります。

 しかし、これは経済現象の“一面”でしかありません。しかも大企業から見た、というキャプション付きです。

 韓国の実状が語っています。勧告開発研究院(KDI)によると政府方式では四・八%を示す潜在失業率(就職口がないと思い込んで求職活動自体を諦めている人を含む数値)が、ILO(国際労働機構)方式に変えるとソウル地域の二○代青年層の二○一一年一○月時点での潜在失業率は二一・二%にも上っています。

 「ボルガー・ルール」とはそのボルガー氏が提唱、推進しているもので、基本理念は金融システムの安定をはかるために、預金を扱う商業銀行は顧客のためになる場合を除き、投機目的の取引を禁じるというものです。

 デリバティブ市場がかなり曖昧なルールであったために、サブプライム危機の発生を招いてしまったことを顧みてのことです。
 アメリカは借金棒引きのために人民言や日本円を大幅に切り上げさせた後、どう出るのでしょうか。しばらくはそのままでいいとしても、減価したままのドルでは、アメリカに資金が還流しないので、それも困ります。借金を大幅に減らしたあとは、再度アメリカに資金還流を促す何かが必要になってくるのです。そうでなければ、借金体質のアメリカ経済は動いていかないからです。

    金本位制を見捨てたアメリカが金を世界一持ち続けるのはなぜか 

 アメリカが部分金本位制を復活させる時期を予想するのは難しいですが、より現実味を帯びてくるのは資本主義最後のバブル崩壊後と思われます。

 実はドイツは対GDP比で輸出が占める割合が三○%以上と先進国の中でもっとも高い部類に属しています。輸出にとって都合がいいのは通貨安です。そして輸入にとって都合がいいのが通貨高。つまりドイツ経済は今回の欧州債務危機の煽りを受けるどころか、ユーロ安の恩恵をもっとも受けているわけです。ギリシャ危機が早急に解決し、ユーロ高となっていたなら、これほどまで輸出主導の好景気はなかったのです。

       中国を待つ失われた五○年 

 中国は今後、おそらく中東の独裁国家と同じような経緯をたどるのではないかと思います。

 格差問題、食糧不足の激化により結果的に内部分裂を起こしてしまう可能性があります。

 その結果、北部はロシアに付き、西部は欧州に、沿岸部は東南アジアと付くような内部分裂の形になってしまうのではないかとも予測されます。

 なぜならば、内部分裂を起こして中国を弱化させるのがアメリカの戦略でもあるからと思うからです。

 精彩を放つ日本企業、中小・零細企業。貿易収支と所得収支の観点から見て最高のバランスにある日本。