シェールガス革命で世界は激変する長谷川 慶太郎氏+泉谷 歩氏

フーチ 80%
   シェールガス革命に必要な日本の技術力
 いまアメリカにおいて、大型のガス火力発電所の建設が急ピッチで進められていること。

そのため、多くの大型の発電機が必要とされているのだが、そのような大型の発電機を製作できるアメリカの重電機メーカーは、いずれも日本の重電機メーカーの系列下に置かれている。ということは、アメリカでシェールガス革命による投資が増えれば増えるほど、日本の重電機メーカーには大きな利益がもたらされることになる。

 また、シェールガスを運ぶパイプラインや、シェールガスの採掘のために地下何千メートルもの深さまで通してもビクともしない強靭なパイプは、日本の鉄鋼メーカーにしか製造できない。

 さらには、採掘現場では大規模な工事が必要であり、そこで使用される重機や超大型のダンプなどは、ほとんどが日本の建設機械メーカーのものである。コマツが開発した無人ダンプは、いまアメリカからの注文が殺到している状況だ。

 このように、シェールガス開発においては、日本の高い技術力が至るところで用いられ、その結果、関連した技術をもつ日本の製造業にとって、大きな利益をもたらすことを忘れてはならない。 

しかしながら、CNGではないものの、いま世界で最も大規模にガス自動車を走らせているのは、実は日本のタクシー業界である。
日本のタクシーは、LPG(液化石油ガス)を燃料として使っていて、このLPGを燃料とするガス自動車を製造しているのは、すべて日本の自動車メーカーである。

中国の場合、シェールガス云々よりも、最大の問題は共産党一党独裁という政治体制を維持できるかどうかにある。さらには、政権内部でも改革開放路線を続けるのか、あるいは文革路線に戻るのか、壮絶な権力闘争が行われているものと見られている。
経済の状態もきわめて深刻だ。今年(二○一二年)に入ってから失業者が一億人以上出たという情報もある。バブルは弾けているし、世界経済の景気減速もあって輸出市場も縮小している。外国資本の進出も激減していて、失業者はさらに増えることが予想されている。

 シェールガス革命によって、エネルギー・コストが低下することで、今後は航空産業が飛躍的に発展することになる。LCC(ロー・コスト・キャリア=格安航空)が世界的に動きだしたこともあって、世界中が「空の時代」へと突入することになるだろう。それは日本も例外ではない。

 エネルギー・コストの低下で、デフレ社会に拍車がかかることを指摘したい。まず、原油相場が下落することで農産物価格も下落する。
なぜなら、バイオエタノールのマーケットがなくなるからである。再生可能エネルギーは「冬の時代」を迎える。日本はエネルギー・コスト減の恩恵を享受する。共産党一党独裁体制の崩壊が見えてきた アメリカはウォール街、製造業ともに復活する。メタンハイドレートの実用化が見えてきた。

 メタンハイドレートの用途は幅広く、通常の都市ガスの原料にも使用できる。ただ、最も大きな用途は発電の燃料である。
メタンハイドレートをガス化して発電を行えるようになれば、日本の電気料金が劇的に下がることは間違いない。それどころか、日本が世界有数のエネルギー供給国になり得るのだ。

したがって、それに対しての投資は惜しむべきではないのだが、日本政府がメタンハイドレートの実用化やそれに関連する産業への研究開発に投入している資金は、わずか二○○億円にすぎない。