コトダマ学島田 正路氏

 現在日本人が使っているアイウエオ五十音の一音一音を当て、組み合わせて「コトタマ」と呼びました。

漢字を当てると「言霊」となります。そうです。人間の心は全部で五十個のコトダマから成り立っているのです。人間の生きた心、言い換えますと人間の精神生命は五十個のコトタマから出来ており、ちょうど五十個で、一個でも多くも少なくもありません。

 人間の心の宇宙が全部で五十個のコトタマで構成されていることが分かりました。そして五十個のコトタマの動かし方、運用法もまたきっちり五十あることを発見したのでした。人間の心の現れ方(現象)は多種多様で、心の動き方も無数でありますが、心の奥の奥の要素であるコトタマからみますと、五十個のコトタマが五十通りに動くことしかないのです。

それによって千差万別の色々な現象が発生してきます。この五十個の要素と五十個の動き、合わせて百個の原理がコトタマの学問の基礎となっています。

 古代の日本人の祖先は苦心の結果、この心の先験の構造を明らかにしました。それによると心の先天の部分は十七個のコトタマで構成されています。そして心の後天要素―何らかの心の現象として現れたものの要素としてのコトタマは三十三個であります。先天十七、後天三十三、合計五十個のコトタマが心のすべての要素です。
 自分の心の出来事が同時に心の宇宙そのものの現象でもあることです。人間の心とはどういうものなのか、ということをすべて知り尽くしていた日本人の祖先が、人間の心の言霊による構造をそっくりそのまま形式として表した建物が伊勢神宮なのです。このような建築様式を唯一神明造りといいます。

 伊勢神宮の内・外宮の正殿の床下に置かれた「心の御柱」について 

一説によりますと、昔、榊の木の枝に鏡を懸け、天照大神の神霊の降下を祈願した風習が、いつしか鏡と榊が別々になり、榊の代わりに心の御柱が立てられたのだ、といわれます。

その証拠には心の御柱は床下の地中に埋められており、御神体である鏡はその真上の正殿の床上に置かれているというのです。

 人間精神の原理である言霊の学問の立場からみるならば、心の御柱の意味は明快に謎解きされるのです。
 この心の住み家である精神の主体の構造を、古神道言霊学は天の御柱と呼びます。

こうした心の現象を生み出す元の宇宙、心の住み家の宇宙を器物として形として表徴したのが伊勢神宮の内・外宮の正殿の床下に祭られてある「心の御柱」なのです。

         心の御柱御神体 

天照大神御神体八咫鏡であります。正殿床下の心の御柱は先にお話したように、人間が生まれたままの自然の心の構造を五十音で表した伊耶那岐(美)の神の意図(天津菅麻音図)の母音の並びを形どったものです。この生まれたままの天与の五十個の言霊を操作し、運用して人類の歴史を創造していく規範となる最高の精神構造を完成しました。この完成された構造を天照大神と呼びます。

またその構造を形どったのが御神体である八咫鏡です。

 ですから伊耶那岐(美)は神は親で、天照大神はその子供です。心の御柱は歴史を創造する土台であり、八咫鏡は創造のための完成された規範である、ということが出来ましょう。

 伊勢神宮が五十音の言霊をお祭りしてある五十鈴の宮であることをご理解いただけることと思います。
 内宮の天照大神は、人類の歴史を創造する法則そのもの(鏡)であります。

その構造は言霊で出来ています。外宮は、天照大神が召し上る食物を入れる容器を意味します。言い換えると食物を司る神です。

 内宮は原理・法則をお祭りし、外宮はその法則によって、世界中に起こるすべての物事を処理して歴史を創っていく場所といったら良いでしょう。

 内宮は人類の文明創造の規範である天照大神をお祭りしてあります。