「水問題」が中国の命取りに

「空に吸うべき空気なく、大地に食すべき糧なく、川に飲むべき水なし」。

中国では今、こんな言葉が庶民の間で囁かれているという。

 大気には、日本でも今春大きな話題になった微小粒子状物質「PM2.5」などの汚染物質が漂い、大地が生み出す食べ物は汚染されたコメや小麦に、病死して長江に投棄された数万頭のブタやインフルエンザにかかった鶏、そして中国人をあきれさせたネズミ肉を化けさせた偽羊肉など恐くて食べられないものばかりだ。

 そしてとどめは五月に発覚したミネラルウォーターの品質虚偽事件。

赤を基調にしたパッケージで知られる中国のミネラルウォータートップブランド「農夫山泉」の中身がクリーンで安全な水どころか、水道水にも劣るほど雑菌や有害物質が含まれていたことが明らかになった。

他の中国ブランドのミネラルウォーターも大半が基準を満たさない汚染ウォーター。水道水は危険なので飲まないと、懐を痛めてわざわざミネラルウォーターを買っていた中国の庶民には衝撃だった。

 庶民の水質汚染に対する視線が厳しくなっているのは、中国各地で飲料水の汚染によるとみられる病気が多発しているからだ。

肝臓、腎臓、胆嚢、咽喉など特定部位のガンがある狭い地域の住民に集中発生するケースで、そうした場所は「ガン村」と呼ばれている。

全国に二百七十ヵ所以上の「ガン村」が確認されている。中でも河南省は「ガン村」が飛びぬけて多い省で、孫営村は九○年代以降、村民の死亡原因の五一・五%がガンとなっており、黄孟営村では住民の五四%が消化器系のガンで亡くなっている。 ガンの比率は地元に工場が建てられ、川に排水が流れ込み始めてから急激に高まったという。

淡水資源は世界平均の四分の一。