愛が遺伝子スイッチON村上 和雄氏

フーチ 100%
 
細胞一個が偶然に生まれる確率は、一億円の宝くじを百万回連続して当選するほど、素晴らしいことなのです。さらに、最近の遺伝子研究からわかったことは、遺伝子の働きはそれを取り巻く環境や、外からの刺激によって変わることもある、ということです。正確にいえば、それまで眠っていた遺伝子が目を覚ます事があるのです。

 外からの刺激の中に、人の心の使い方も含まれています。

心の使い方のキーワードの一つが「愛」です。

 当然、スイッチがオンになれば、ふだんは出せなかった力が発揮できますから、人間の一生は授かった遺伝子がどう目覚めるかによって決まるといっても言い過ぎではないでしょう。

心の使い方や環境で変わる

遺伝子スイッチの不思議 

私は「笑い」「喜び」「感動」「感謝」などのよいストレスによっても、遺伝子の働き(オン・オフ)が変わると考えました。

遺伝子のスイッチは、知識の働きでは作動しません。やはり感情の動き、「感動」がスイッチをオンにしたり、オフにしたりするのです。面白い、おかしい、悲しい、好きである、嫌いである、そのような感情こそが大切なのです。

 松本博士はこうも書いています。「愛は人が成長する源であり、心の活性化エネルギーなのである。脳にとっての最大の価値、そして活性化のもとは、関係欲求の充足であり、それは愛という概念で表現されるものなのである」(同書)。

 これは宗教の文章ではありません。旧通産省工業技術院電子技術総合研究所で神経の研究に従事し、独創的な研究業績をあげた、日本のトップ脳科学者が書いたものです。

「愛」が「祈り」となって大きな可能性を生み出す

 現時点では、「祈り」には好ましい遺伝子をオンにし、好ましくない遺伝子をオフにする効果がありそうだ、というあたりまではかわってきています。「祈り」といえば、これまでは宗教の世界だけのものと考えられていました。

ところが、遺伝子の研究が進み、さまざまなことがわかってくると、そうとばかりも言っていられなくなったのです。
遺伝子は、生命の働きそのものを司っています。その中には膨大な情報と、きちんと秩序立った働きが見られます。これは、これまでの化学の常識や人知を超えているため、私たちは「サムシング・グレート」(何か偉大なるもの)と呼ぶしかないのです。
「祈り」というのは願望のことでもあります。

病気の回復と「祈り」の不思議な関係 
たとえば、多発性硬化症という難病にかかった修道女がいます。二十歳のときに発症した彼女は修道院を去り、やがて車いす生活となりました。そうなるともう、神の存在も「祈り」の効用も信じなくなったといいます。

 病状はさらに悪化していき、もうじき寝たきりになるだろうと医師にも宣告されてしまいます。しかしこのころから、彼女は再び祈り始めます。

 するとある夜、夢野中で何者かに癒しのために行くべき場所を指定されます。人の助けを借りてその場所に出かけた後、彼女は心から祈るようになっていくのです。

 やがて、彼女の体に変化が起きます。朝、目が覚めると膝の筋肉が痙攣していました。車いすに乗って動いていると、頭の中に「私、歩けてるのでは?」という思いが浮かびます。

彼女は、車いすから立ち上がりました。そして足を動かしてみます。歩けます。二階への階段を上ったり、外へも出てみました。ついには走ってみました。そうです。彼女は治っていたのです。

        遺伝子には性質がある

・遺伝子には細胞を絶えずリフレッシュし、生命の更新を管理する機能がそなわっている
・そのオン・オフのスイッチは決して固定されたものではなく、刺激や環境の変化で作動したり切り替わったりする
・このような遺伝子の働きは人間に固有のものではなく、動物も植物も、さらには細菌にも作用する
 

人間の遺伝子暗号は99・5%がどの人も同じ

 とくに人間には、ほかの動物とは比較にならない素晴らしい脳が与えられています。生まれながらにして、約百四十億の神経細胞があります。

世間では簡単に頭の優秀などをいいますが、それを先天的に決められているものではありません。生後、この神経細胞をどのように使用するかによって、すなわち、どのような環境に育ち、どれだけ努力したかによって優秀が決まるのです。
 遺伝子学てきにはいえば、遺伝子暗号は99・5%以上他人と同じです。人はそれぞれ違うけれど、みんな素晴らしい可能性を持っています。

百二十七億年前にできた水素が今あなたの中にある

 ビックバンの直後に生じた水素原子は、現在も生き物の中に残っています。

ヒトの体には、百三十七億年という宇宙の進化の歴史が凝縮されて詰まっているのです。すごいことだと思いませんか。