視力が突然低下!網膜を襲う現代病

 ある日突然視力が0.1以下に低下し、時には失明にまで至る中高年が増加中。その原因は、眼のスクリーンである「網膜」に起こるさまざまなトラブルです。

           社会的失明

完全な失明ではありませんが、普通の生活が困難になってしまうほどの著しい視力低下を「社会的失明」と呼びます。具体的なケースとしては、「眼鏡などを使っても(矯正視力)、視力が0.1以下で、歩行が困難である」「真ん中の視野が失われる」」などが該当します。

 視力低下の原因はどこに?

     目の構造は、大きく分けて3段階あります。

 ・水晶体:レンズの役割

網膜 :水晶体から取り込んだ対象物を映すスクリーン

視神経:スクリーンの情報を脳に伝える

 視力が低下する原因として多く考えられるのが、白内障緑内障です。

 ・白内障:水晶体が白濁して、視力が低下する
 ・緑内障:視神経にトラブルが起き、視野が欠ける

 しかしAさんは、白内障でも、緑内障でもありませんでした。つまり、水晶体と視神経には問題がなかったのです。となると、視力低下の原因は「網膜」にあると考えられます

意外!視力検査の落とし穴

 人間がものを見るとき、実際に視力通りに見えるのは、黄斑に映っているごくごく狭い範囲で、それ以外の部分は、実は大まかにしか見えていません。

 よって、視力検査とは、網膜上では黄斑の働きだけを診る検査に過ぎず、もしも黄斑以外の網膜で異常が起きていても、視力検査では発見できないのです。

黄斑に忍び寄る魔の手 網膜の出血

 網膜の毛細血管が傷んでいく過程では、自覚症状はほとんどありません。だからAさんは、自分の目の異常に気がつかなかったのです。

 では、Aさんの網膜を傷つけた真犯人は何だったのでしょうか?実はAさんは糖尿病の患者で、糖尿病の合併症のひとつ「糖尿病網膜症」を発症していました。

 真犯人は新生血管

 糖尿病を患うと、網膜に無数にある毛細血管の中に詰まってしまう箇所が出てきます。すると、網膜の細胞の中に、酸欠状態に陥るものが出てきます。

 このときに作られるのが「新生血管」です。新生血管は、詰まってしまった血管の代わりに、細胞に酸素を届けようとしますが、血液を漏らしやすく切れやすいのが特徴です。

 新生血管がたくさんできると出血の範囲がだんだん広がってしまい、やがてAさんが経験したような大出血につながるのです。

    加齢黄斑変性 画期的な最新治療

「糖尿病網膜症のレーザー治療」と「加齢黄斑変性のレーザー治療」の違い

 糖尿病の「レーザー光凝固」は、出血を起こしている付近の網膜の細胞を焼くのが目的です。従って、比較的強いレーザーが必要となります。

 一方、加齢黄斑変性の「光線力学療法」は、黄斑の視細胞を生かしつつ新生血管だけを潰すのが目的です。
 従って、ごく弱いレーザーしか使えず、そのためにレーザー効果を最大限に高める薬の投与が不可欠となります。

 加齢黄斑変性になりやすい人は?
 ・50歳以上 ・喫煙者