多発性骨髄腫

 からだには、外から侵入した細菌などを撃退するしくみのひとつとして、抗体とよばれる免疫グロブリンをつくる細胞(形質細胞という)があります。

 この形質細胞が悪性化(がん化)しておこるのが多発性骨髄腫という病気です。これは、一〇万人に一人くらいのまれな病気で、'主として高齢者にみられます。

 腫瘍化した形質綿胞は、骨髄腫細胞とよびます。最初に一個の骨髄腫細胞が発生し、それがねずみ算式に増えて病気として認識されるようになります。

この骨髄腫細胞は、いくら増えても最初に腫瘍化した細胞と同じ性質を保っているので、ひとりの患者の骨髄腫細胞はすべて同じ性質をもった免疫グロブリンをつくります。このような免疫グロブリンを単クローン性ガンマグロブリンとよびます。

 免疫グロブリン(Igと略します)にまは19G、I9A,19M,19D,19Eの五種類あり、おのおのの免疫グロブリンは、それぞれに特有な構造をもつ重鎖とよばれる部分と、各免疫グロブリンに共通する軽鎖とよばれる部分からできています。

 正常では、この重鎮と軽鎖がバランスよく合成されていますが、骨髄腫では軽鎖がよぶんにつくられることが多く、血液中や尿中に単クローン性の軽鎖(ベンスジョーンズたんぱくとよぶ)をみとめることがしばしばあります。

骨髄や、骨、腎臓、血液の病変をおこし多彩な症状がでる骨髄腫細胞は骨髄で増殖し、正常の血液をつくるのを障害したり、骨を溶かしたりするので、貧血、血小板減少などの血液の異常がおこったり、骨がもろくなって骨粗鬆症とよばれる状態になります。
骨粗鬆症が進行すると、脊椎背骨)がからだの重荷に耐えかねてつぶれることがあります(圧迫骨折)。

初期のころは、症状はないか腰や背中が痛いという、病気のせいなのか年のせいなのかわからないような症状がでてきます。骨が弱くなるために、ちょっとしたことで手や足の骨折(病的骨折)をおこしたり、骨髄腫細胞が腫瘤(しこり)をつくった場所での骨折をおこすこともあり、この骨の変化が、生活するうえでもっとも問題になります。骨が溶けてくるしくみはわかっていません。

 骨が溶けて、血液中のカルシウム濃度が高くなると、意識障害、多尿、口渇などの症状があらわれてきます。

過剰に産生された免疫グロブリンの軽鎖が腎臓に沈着して、障害をおこしてくることもあります。正常な形質細胞は減少しているので、抗体をつくるはたらきが障害され、からだの低抗力が低下し、さまざまな感染症に悩まされることもあります。

また、血液中にガンマグロブリンが著しく増加するために、血液が粘っこくなって循環障害がおこり、心不全、倦怠感、頭痛、意識障害、けいれんなどの症状があらわれることがあり、過粘欄度症候群とよばれます。

対応
免疫グロブリン産生形質細胞
右の腫瘍化した骨髄腫細胞
       (抜く)    之メンタルレベル
 腎臓・血液         之 異常免疫グロブリン
               過剰グロブリン軽鎖 之メンタルレベル
                 ガンマグロブリン