米国と心中したい日本のQE拡大

 10月31日、ちょうどハロウィンの日に、日本銀行は、円を増刷して日本国債を買い支えるQE(量的緩和策)の拡大を発表した。日銀は、これまでのQEで年に50兆円の日本国債を買いさえてきたのを、80兆円に拡大する。

これは、日本政府が年間に新規発行する国債の総額とほぼ同じだ。日本は今後、財務省が発行する国債のすべてを(財務省出身の黒田が支配する)日銀が買い取る自家消費(自画自賛、自作自演)の国になる。これまで国債の大口購入者だった公的年金基金(年金積立金管理運用法人)は、国債購入を日銀にゆずり、その分の資金で国内と海外の株式、海外の債券を買い増しする。

この買い増し期待から、日本と米国などの株価が急騰した。世界各国の年金基金の殆どは最近、金融市場のバブル崩壊を懸念してリスク回避に動いているなか、日本の公的年金だけは逆方向で、株や債券を買い増してリスクを拡大している。

日銀がQE拡大を発表する2日前、米連銀がQEをやめた。連銀はQEで、7月に350億ドル、8月に250億ドル、9月に150億ドルを増刷して米国債などを買い支えた後、10月に増刷をゼロにした。一方、日銀はQE拡大で今後、年に30兆円を増刷するが、この額は1カ月当たりのドル建てに換算すると200億ドル強だ。

連銀のQEがドル増刷で、日銀のQEは円増刷という為替の問題はあるが、為替相場も事実上日米などの当局が管理しており、当局にとって為替は問題でない。米国のQEを日本が引き継いだといえる。

金融バブル再崩壊の懸念 日銀のQE拡大について、米欧では批判的に描く分析が目立っている。分析記事集サイトのゼロヘッジは「日本のQEは、末期の病人に打たれる(沈痛効果だけで治療にならない)モルヒネだ」と題する記事で「ハロウィンの日に日本が自殺下」と書いたり、QEをアベノミクスならぬ「バンザイノミクス」と呼ぶ記事を出している。

(かって日本経済の大黒柱だった)輸出は、今日本のGDPの15%を占めるにすぎない(ドイツは51%、韓国は54%)。

それなのに安倍政権は、為替を円安にして輸出増で日本経済を上向かせることにこだわっている」「日本はすでにほとんど成長できない老人国なのに、安倍は財政赤字を野放図に増やしている」「消費増税も日本経済に大きな悪影響を与えている」と批判している。

日銀は、QEを今後10年続ける予定だ。10年も持つのか疑問だに書いたように、日銀がQEによって発行済み日本国債の半分を保有するようになる4年後の2018年の前後までに、日本のインフレ率が5%以上になって歯止めがかからなくなるか、米国で金融崩壊が起きるのでないか。