日本財政危機」という神話

       債務残高はGDPの2倍?

 IMF国際通貨基金)やOECD経済協力開発機構)などのエコノミスト格付け会社が、財政危機の根拠としてこぞって言及するのが日本政府の債務残高がGDPの2倍以上と言う衝撃的な数字だ。毎年の「稼ぎ」の倍以上もの「借金」を抱えているというのだから恐ろしい話に聞こえるかもしれない。しかし、この数字をうのみにすると本当の日本財政の姿を見誤ることになりそうだ。

 コロンビア大学日本経済経営研究所副所長であるデービッド・ワインスティーン教授によれば、この数字は日本政府が保有する膨大な資産がまったく考慮されていない、「誤解を招く」負債規模だという。

 日本は政府関連の公的機関がアメリカに比べて非常に多く、それぞれが大きな資産を保有している。しかし財政赤字に警鐘を鳴らすエコノミストは、そうした資産を考慮に入れず債務の額面だけに注目しているようだ。「企業財務と同じく、国家の財政も資産から負債を差し引いた正味の赤字額で判断しなければならない」。

 ワインスティーンが日本の政府系機関全体の資産を含めた上で、「純粋」な財政赤字額を算出したところ、債務残高の体GDP比はせいぜい80%程度。よく言われる「GDPの2倍以上」の3分の1ほどでしかなかったという。

       実態と懸け離れたロジック

 独り歩きした数字に踊らされ、現実に即さないロジックに基づいて進む税制改革は、どこかぎくしゃくしている。「多くの人が統計の実態を理解しないままに、財政再建が必要だという感情に陥っている」と、コロンビア大学のワインスティーンは言う。「いま日本の財政再建に必要なのは、経済成長を刺激する政策だ」。