日本は焦る必要はない

 中国政府ではなく、AIIBの看板であれば受け入れる国の反発は少なくなる。中国政府がこう読んでいるのは間違いない。
その意味からもAIIBは中国の外交戦略の実施部隊のひとつにすぎない。中国はAIIBを通じて何を狙っているのか。「一帯一路」である。一帯は「シルクロード経済ベルト」、一路は「二十一世紀海のシルクロード」を意味する。習主席が提言したもので、かつての陸のシルクロードの沿線となる中国内陸から中央アジア、中東へ道路や鉄道を整備し、産業を起こし沿線の経済を活性化させようという構想だ。

海のシルクロードは中国から南シナ海を通り、マラッカ海峡、インド洋を抜け、中東に至る海上交易ルートを指す。ともにロマンがありそうな命名だが、実際は中国の石油、天然ガスなどエネルギー輸入ルートの確保と沿線での資源権益獲得が狙い。
エネルギー安全保障の一環だ。これほどまでに中国の意図が鮮明である以上、日本がAIIBへの参加を見送るのは当然だろう。日本は焦ることなく、ADBの強化と世銀や国連との連携でアジアのインフラ構築に協力していけばよい。

義はどちらの側にあるか、そう遠くない将来に判明するのだから。