血管と健康寿命

石井光氏
人は血管から老いる
血管は約10万キロメートルのライフライン
 1500憶本ほどあるこの毛細血管は、血管のおよそ90%を占めており、最も細い部分では直径1000分の7ミリメートルほど。ごく細い血管が網目状になって、人体に約60兆個存在する細胞のすべてを覆っています。この細く、薄い血管を通じて、細胞内に酸素・栄養素などが運ばれ、代わりに不必要になった二酸化炭素・老廃物が運び出されているのです。

血管のアンチエイジング

 それは血管組織を構成している重要なたんぱく質、コラーゲンに注目した方法です。

 この年齢を重ねてコラーゲン合成が低下してくると、新陳代謝が悪くなって、新鮮なコラーゲン供給が遅れ、血管内に古くなったコラーゲンが残るようになります。これが「老化コラーゲン」です。

動脈硬化の原因は血液ではなく血管にあった
 老化コラーゲンは本来のコラーゲンと比べ脆弱なものです。弾力性も柔軟性も弱いため、ひげ状の繊維ができます(架橋形成)。動脈硬化は、動脈硬化炎ともいわれ、炎症により傷ついた内膜から、このささくれだった部分が血管内に露出すると、血液中の血小板やコレステロールがまとわりついてプラークが形成されるのです。
 分かりやすく図解すると次ページの図のようになります。

 しかし、このコラーゲン合成機能は20代後半以降は低下してしまいます。いい換えれば、全身の細胞に新鮮なコラーゲンが供給されにくくなるのです。身体の大きさが小さくなるわけではありませんから、当然、老化したコラーゲンが体内に長く溜まるようになります。その結果、肌にはハリ・ツヤが失われ、しわやしみができやすくなるのです。

 わたしが指導したコラーゲン摂取方法はひじょうに簡単です。
 毎朝、空腹時に5グラムの粉末をビタミンCを豊富に含んだジュースと一緒に飲む。たったこれだけのことで、なぜ血管の組織を修復できるのかと、不思議に思われる方も多いかもしれません。

体内でどのようにコラーゲンができるのか
 分子レベルで見ると人体は水、たんぱく質、資質などからできています。
 たんぱく質は複数のアミノ酸が結び付いてできる化合物で、あらゆる生物の身体に欠かせない物質です。たんぱく質とひと口にいっても、その種類は多様です。構成するアミノ酸の種類、結び付き方によって性質のまったく違う別の種類のたんぱく質になるからです。人体を構成するたんぱく質の種類は約10万種類に及びます。その約30%を占めているのがコラーゲンです。

 肉や魚などにはたんぱく質が含まれていますが、これがそのまま利用されることはありません。これらは胃腸内の胃液、すい液、十二指腸液によって消火され、様々な種類のアミノ酸に分解されて、腸管から吸収されます。これらアミノ酸のなかで特に結合力の強いプロリン、ヒドロキシプロリン(水酸化プロリン)などが結び付いて、コラーゲンが合成されるのです。この合成能力が最も活発に働くのが20代前半です。

 成人が一日に代謝するコラーゲン量は、欧米の複数の研究論文のデータを平均すると2グラムほどになります。

 豚足、手羽先にもコラーゲンは大量に含まれていますが、毎日豚足を食べていたら、余分な脂肪まで取り込むことになってしまい、肥満や脂質異常症といった生活習慣病のリスクが高まります。これでは本末転倒です。
 こうした理由から、わたしは、コラーゲンはサプリメントで摂るのが現実的だと考えます。