不思議な生命体ソマチット(1)    

   タイムマシンに乗った化石
 この、何とも神秘的なソマチットの存在を科学の言葉で世に知らしめたのはガストン・ネサン博士だが、実は今から千年以上も前、弘法大師空海がその存在を見抜いていた節がある。「血脈」という概念を、空海は「血の中に脈々と受け継がれている尊い意識や魂がある」と教えているのである。

 さらに、古代インドのウパニシャッドには、「神は鉱物の中で眠り、植物の中で目覚め、動物の中で歩き、人間の中で思惟する」とある。

 私は、二五○○万年前の貝化石の中にじっと閉じこもっていた、辛抱強いソマチットを目覚めさせるという実験を行なった。

 その結果わかったことは、私たちの身体の中にいる現代のソマチットと古代のソマチットとでは、環境悪化に対する耐性に違いがあることだった。二五○○万年前の地殻変動で生き埋めになった古代の貝。その貝殻に避難して今日まで休眠していた古代ソマチット。それらは、情報過多の現代ソマチットの比べて、素直に本来持っているDNAの設計図通りに身体を元の状態に戻す力が強かったのである。

 ガストン・ネサン博士による免疫強化製剤や、私が貝化石を使って実証した骨粗鬆症の改善は、そのポテンシャルの一例に過ぎない。後述するが、骨粗鬆症の改善には七万人の症例がある。

 血液中を動き回る、その謎の生命体は、炭化処理温度にも、強い放射線も耐え、遠心分離器の残留物から取り出しても無事であり、その殻はダイヤモンドのナイフでも切ることのできない硬度を持つ“不滅”の存在だった。

 ネサン博士はさらに、ソマチットが体内の健康状態で十六タイプに変容することや、ソマチットのライフサイクルが体の免疫系の状態と密接に関わっていることにも気付いた。症状が悪化する具体的な兆候が現れる十八ヶ月前に、その発病を予測できるというのだ。

        宇宙より飛来した生命

 星は破壊していく過程で、いくつもの爆発を行いながら、星屑を隕石として宇宙に飛散させていった。従って、当然のことであるが、その時点でこの星に生存していた生物は、地中、地上のいずれに生活圏があったにしても、すべて高温により完全に死滅したと考えられる。ただひとつの例外を除いて。この例外こそ、我らがソマチットである。
 

この時ソマチットは、すべての生物と共生していたもの以外にも、地中深くの化石、岩石、マグマの中に殻をかぶったまま存在しているグループもあり、さらにまた水中また土中に浮遊していたグループもあったと考えられる。
 
b異変を感じる、すなわち共生していた生物が死んだことを察知し、なおかつ異常な高温を感知するや直ちにそれに対応し、自らを防禦できる殻を作るのには、多くの時間を要することはなかったと思われる。それはおそらく、ほんの数秒のことであろう。

 かくしてソマチットたちは、隕石に殻の状態で入り込み、宇宙へ旅立つことになった。この旅はどのくらいの時間がかかったのか想像もつかない。それはあてのない旅であった。ソマチットが求めていたものは水や炭素、窒素が存在する星に辿り着いて、また生命を作り出すことであった。

 かくしてソマチットは、この地球創世記に、そうした地球を形成した隕石と共に、宇宙より地球に飛来し、マグマおよび海水によって地球全土に拡散されたものであろう。そして地球の生物の源となったと考えられる。

       殻の形成という特殊能力
 さまざまな観察から、ソマチットが、高熱下や水中をはじめとする、いかなる厳しい環境であろうと生き延びてきた、特別なテクニックがあることがわかってきた。

 それは、環境に応じて、自分を保護する殻を作ることができるという特殊能力である。その殻は、形態、強弱は多種多様であるが、殻の形成に要する時間はわずかで、まさに瞬時に殻が形成される。
 この殻については、二種類に大別することができる。

 第一の種類は、隕石と共に、太陽から分かれて地球まで運ばれ、高温高圧下でソマチットの本体を保護した恒久形のバリヤーである。

 これは現在でも、化石の中とか溶岩の中に見出すことができ、完全な球形で、銀色に輝く、非常に美しいものである。大きさはおおむね二ミクロンぐらいで、四百倍以上の解像度の位相差顕微鏡であれば、簡単に見ることができる。
 もう一種は、ソマチットが、その場の環境が自らに影響を及ぼしたり、活動不能であると判断した場合に形成する殻である。動物の体内においても、自然界のあらゆる場所においても、環境の変化に即応して、この殻形成が行われる。殻の形は一定ではなく、また殻を形成した後でも、形状が変化することがある。