夢のがん治療薬「オプジーボ」は

こんなに効く
 人が本来持つ免疫力を利用してがんを退治する新薬が、がん治療の世界で革命を起こしつつある。一回の投与で100万円前後と超高額だが、効果は絶大。

人類とがんとの闘いに決着がつく日は近い。副作用もほとんどない。腎臓がんにも適用が間近。

      免疫力の「ブレーキ」を外す

 かつてアメリカのジョーンズ・ホプキンス大学に在籍し、オプジーボ開発前の基盤的研究に携わった国立がん研究センター・免疫療法開発分野長の吉村清氏が解説する。

「免疫というのは、病原体やがん細胞といった異物を排除する機能のことです。がんはジワジワと体の中でできていきます。そして、がんができていく過程で、本来がんを攻撃すべき免疫機能が弱まって、がんの存在を許してしまうのです。つまりがんから『返り討ち』にあうのです」。

 病原体やがんなどを攻撃する機能を担うのが、「キラーT細胞」と呼ばれる免疫細胞だ。体の中にがんができると、「体内にがんという異物ができた」という信号を受けて、キラーT細胞は自動車のようにアクセルを踏んでがん細胞を攻撃しようと近づく。

「ところが、がん細胞は非常に巧妙でキラーT細胞が近づいてくると、『攻撃の必要はない』という偽の信号を送って、攻撃の手をゆるめさせてしまうのです。このブレーキ作用が原因でがんは生き延びることができる。

従来の免疫療法は、キラーT細胞のアクセル部分を強化させようという発想で作られてきました。ところがオプジーボは、「どんなにアクセルを踏んでもブレーキがかかっていれば動かない。ならばブレーキを外してしまおう」という発想で開発されたクスリです。その結果、今までと段違いによく効く免疫薬が生まれました」(吉村氏)。

 キラーT細胞はPD−1、がん細胞はPD−L1というブレーキ役の分子を持っている。この二つが手を結んでしまうと免疫チェックポイントが働き、攻撃にブレーキがかかってしまう。

 オプジーボはこの二つの分子が結合しないようにする抗PD−1抗体を含む。そのため、オプジーボが効くと、キラーT細胞は偽の信号に惑わされずブレーキが解除され、アクセル全開でがん細胞を攻撃することができるのだ。

☆患部のキラーT細胞にEg入れまくり、
患部の抗PD−1にもEg入れる