心を生みだす脳のシステム?
茂木 健一郎氏
 脳の中には、約一○○○億のニューロン神経細胞)がある。それぞれのニューロンが、シナプスと呼ばれる数千から一万の統合を通して他のニューロンと関係を結んでいる。
 ニューロンにも、心はない。脳の小さな部分を取り出しても、そこには心がない。心を生み出すのは、脳全体にまたがって、一○○○億のニューロンが作り上げる。複雑で豊かな関係性である。つまり、心を生み出すのは、脳というシステムなのである。
 自分がある行為を「する」というのは、運動に関することである。一方、相手が同じ行為をするのを「見る」というのは、視覚に関することである。その両方に対して同じように活動するミラーニューロンのようなニューロンが構成されるためには、視覚情報と運動情報が渾然一体とならなければならない。さらには、自分自身の運動の状態をモニターする体性感覚の情報も融合される必要がある。