超人類へ!?   終わり

ラメズ・ナム氏
 地球上に生命が出現したのはおよそ四○億年前のことである。生命出現から三○億年間は、単細胞の生物しかいなかった。多細胞生物が出現したのはそれからかなり後、約七億年前のことで、そのとき初めて生命の多様性が花開いた。約五億四○○○年前にカンブリア爆発が始まり、それからわずか数千万年のあいだに、現在の生物に見られる基本的なボディプランがすべてつくり出された。

  なんらかの理由で、最初の三億年間近くは藻類や細胞程度の単純な生き物しかいなかったのが、またたくまにすべてが変化して、それまで見られなかった複雑さや多様性が登場した。新しい生命形態が出現したが、それは単細胞生物や細胞のたんなる寄り集まりから、泳いだり、歩いたり、空を飛んだり、さらには、自分たちを取り囲む世界を未熟ながらも観察し得る複雑な生物へのパラダイム変革を体現していたのだ。

 私たち人類は、まさに次の位相変化を象徴する存在である。私たち人類の出現には、生物学的に見れば、多細胞生物の出現と同じくらいの意識があるのだ。チンパンジーは細菌からかけ離れているが、私たちは、それと同程度に、過去地球上に出現したすべての生命からかけ離れた存在だ。

  自らのこころやからだを変える力、子どもたちのこころやからださえも変える力、自らの発達を管理する力を持つようになったのは私たちだけだ。その力を駆使すれば、ただ闇雲に、広まりやすい遺伝子が自然選択されるに任せるのではなく、自らの発展進路を選択できるのだ。