糖質制限革命

江部 康二氏
・糖尿病、肥満だけでなく、そのほかの生活習慣病や、がん、アルツハイマー、健康増進などにも効果を発揮
・「糖質制限ダイエットに失敗」や「慎重論」のほとんどは“正しい知識”が欠如しているだけ
・正しい糖質制限の普及により、兆円単位の医療費が削減できる

 人類全体に穀物栽培が広まり、食事のカロリーの六○%が糖質という食生活へと変わりました。しかし、人の身体にとっては矛盾していたのです。

 既に人の身体は糖質制限に合うように出来上がってしまっていたからです。約七○○万年もかけて出来た、糖質を食べなくてもいい身体。ほんの一万年前に始まった、糖質六○%の食習慣。この二つの間の矛盾が、今の生活習慣病の根本的な原因なのです。

  アルツハイマー病やがんにも糖質過剰は悪い

 認知症の一つである、アルツハイマー病も糖質のとりすぎが関連しています。糖尿病の患者さんで、治療のためにインスリン注射をしている人は、普通の人と比べて、約四倍もアルツハイマー病が多いことが分かっています。
 腎症が悪化すると人工透析が必要になります。日本では二○一四年に三万八三二七人が新しく人工透析を始めていますが、そのうち、一万五八○九人が糖尿病腎症によるものです(その後、さらに増加していると推定される)。割合にして四一%になり、人工透析の原因として第一位です。

  糖質を減らすと肥満がなくなる3つの理由

 第一は、身体に蓄えられた脂肪を使いやすいことです。逆に、糖質をあまりとらない食生活だと脂質をエネルギーとして使う仕組みがよく働き、皮膚の下などに蓄えられた脂肪が減りやすいわけです。
第二に、肥満ホルモンであるインスリンの追加分泌が少なくなる利点があります。
第三は、糖新生という働きにあります。