武器としての経済学

大前  研一氏
フーチ  90%
 円高でつぶれた会社はほとんどない。なぜ日銀とGPIFが株を“爆買い”しているのに株価がもっと上がらないのか?「マイナス金利」を導入しても景気が良くならないのはなぜ?なぜ失業率が低いのに景気は回復しないのか?

 一例は、クリントン政権時代(1993〜2001年)のアメリカだ。ケインズ理論では、インフレを抑制するために金利を引き上げると個人や企業はお金を借りなくなり、消費や設備投資を控えて景気が悪くなるはずだが、当時のアメリカは金利を高くしたら世界中からカネが集まってきて株価も上がり、どんどん景気が良くなったのである。

 ボーダレス経済ではケインズ理論とは正反対の現象が起きる。加えて日本の場合は、世界に類のない「低欲望社会」になっている。日銀のマイナス金利政策によって、個人も企業も驚くほどの低金利で資金を借りることができるのに、誰も借りようとしない。

 たとえば、日銀が発表した2017年1〜3月期の資金循環統計によると、家計が保有する金融資産は3月末時点で1809兆円に達し、年度末としては過去最高を記録した。そのうち932兆円が「現金・預金」である。

人々は買いたいもの、欲しいものがないから、それをスズメの涙ほども金利がつかない銀行などにジーッと置いたままにしている。だから、消費が一向に増えないのだ。企業も255兆円の「現金・預金」を後生大事に抱えこんでいる。

 景気はみんなの「フィーリング(感覚)」や「サイコロジー(心理)」で決まる。そして、このフィーリングやサイコロジーというのは、マスコミの“偏向報道”によって拡大・拡散される。つまり、日本の景気がなかなか回復しないのは、フィーリングやサイコロジーの問題なのである。

 しかも、そもそも今の日本はモノが充足している。たとえば、家電製品や自動車などの耐久消費財はそれらを必要としているほぼすべての人が所有している。その耐久期間が6年とすると、買い替え需要が毎年6分の1ずつ出てくる計算になる。

 中国経済は、いつ、何がきっかけで崩壊するのか?これから成長するビジネスの「新たな潮流」は何か?「高齢化」と「少子化」社会で、どんなビジネスチャンスを見いだすべきか?エアビーアンドビーの経済効果は1兆円近く。