忘れたころに帰ってきた悪魔

 結核菌は古代エジプトのミイラからも検出され、今も毎日5000人の命を奪う。

 ヒト型結核菌に初めて有効な治療薬が登場したのは1944年のこと。以来、結核菌は次々と新しい薬への耐性を獲得してきた。
 だが90年代後半になると、もっと厄介な問題が起きた。複数の薬剤に対して耐性を持つ多剤耐性結核菌(MDR−TB)がアフリカやアジア、東ヨーロッパで確認されたのだ。今では、現存するほとんどの抗生物質に耐性を示す超薬剤耐性結核菌(XDR−TB)も確認されている。

 実を言えば、人類の約3分の1は結核に感染している。だが健康な人の場合、普通は体内に入り込んだ結核菌を免疫で処理してしまうし、生き残った菌も長い休暇状態に入る。だからほとんどの人は、自分が結核に感染したことさえ知らずに一生を終える