「私たちはソマチッドは〈エネルギーの具現〉であるという結論に達しました。

ソマチッドは生命が〈最初に分化した〉具体的な形態であり、動植物の生きた生体に伝達できる遺伝的特質を持っています。

この結論に達したのは、ソマチッドの最初の正常な三形態がないと細胞分裂が起きないということを発見したからです。ではなぜソマチッドがないと細胞分裂が起きないのかというと、細胞分裂を起こす特別な成長ホルモンを産生するは実はソマチッドの最初の三形態だからです。

そのホルモンはノーベル賞受賞者のフランス人、アレクシス・カレルが何年も前に発見してトレフォンと名付けた物質に、ほぼ等しいと言えると思います」

 この驚くべき事実の裏付けとして、フランソワーズは次のような実験の話をした。

まず、焼き串に刺したシシカバブ(焼き肉料理の一種)用の肉と同じ立方体の新鮮な肉を一個用意する。その肉に、試験管内で培養したソマチッドを注入し、それを真空状態の密閉容器に入れ、周囲の空気や、肉を腐敗させる空気中の物質による汚染から守る。その容器を窓辺などに置いて、日中は自然の陽光にさらす。

 生きた不滅のソマチッドを注入された容器中の肉片は、その後ずっと腐ることはなかった。ソマチッドを注入しなければ間違いなく腐っていたはずである。
肉は健康色を保ち、容器に入れた時の新鮮さを保っていただけでなく、次第に大きくなっていった。まるで生きた有機体の一部のように成長し続けたのである。

 ソマチッドによって生命を吹き込まれた肉片は、さらに電気的な刺激を与えれば、どんどん成長を続け、切り取られる前の子牛や豚を蘇らせることができるのではないか。
そんなばかげた思いがふっと心をよぎった。ソマチッドは何らかの電気を帯びているのではないだろうか。フランソワーズはそんな私の質問を予測していたかのように答えた。

「ネサンが発見した〈小体〉は、本来、基本的に電気を帯びています。血漿のような液体環境では、それらの電荷とその効力を観察することができます。

その小体の核は陽電気を帯び、その外面を覆っている膜は陰電気を帯びています。したがって互いに近づくと、自動的に反発しあいます。ちょうど二本の棒磁石の陰極を手でくっつけようとしても抵抗するようなものです」