2045年の特異点

 『ポスト・ヒューマン誕生』のなかで、カーツワイル氏が提唱し論議を巻き起こしている概念が「特異点(singularity)」である。

 カーツワイル氏によれば、2020年には1台のコンピュータがひとりの人間の知性を凌駕する。

そして、2045年には人間の知能の10億倍の能力をもった人工知能が登場し、人類とテクノロジーの関係が「特異点(人間の能力が根底から覆り変容するとき)」に達するという。
 「特異点」以降、人工知能は人間の能力を上回る機械を次々とつくりだし、もはや人間に制御できなくなる可能性もある。テクノロジーと人間の関係がこれまでとまったく異なる次元に突入する。人類にとっての未知の領域である。

 「特異点とは、われわれの生物としての思考と存在が、みずからの作り出したテクノロジーと融合する臨界点であり、その世界は、依然として人間的ではあっても生物としての基盤を超越している。

特異点以後の世界では、人間と機械、物理的な現実とヴァーチャル・リアリティとの間には、区別が存在しない」(『ポスト・ヒューマン誕生』)