過呼吸」の先にある危機


若者に増えるパニック障害予備軍

叱られて過呼吸。緊張して過呼吸。メールでショック受けて過呼吸…。
軽視は禁物だ。深刻なストレス反応の始まりかもしれないのだから。

 過呼吸の正式名称は「過呼吸(過換気)症候群」。不安や緊張による精神的な要因や肉体疲労などが、自律神経や呼吸中枢に影響して呼吸が極端に速くなる症状だ。空気を吸いすぎて血液中の二酸化炭素濃度が急激に低下し、手足のしびれや失神も起きる。対処としては、袋などを口にあてて吐く息を吸い直せば落ち着く。

 リエコさんが驚いていると、誰かが小さな紙袋を彼女の口元にあて、駆けつけた教員が「ゆっくり吸って」と指示している。それでリエコさんは、その友達がこう言っていたことを思い出した。

 「よく家でなるのよ、過呼吸。お母さんとケンカした後とか。袋も色々と試してみたけど、コンビニの袋なんかは口に吸い付いちゃうから、結構アブナイんだよね」
 10〜20代の若者に過呼吸が増えている。人気アイドル「Kinki Kids」の堂本剛さん(26)は、コンサート中などに何度も過呼吸になっていたことを告白。人気漫画『NANA』でも主人公が過呼吸に苦しむ姿が描かれ、いまや過呼吸はナイーブな若者像の象徴になりつつあるらしい。

 精神科医の熊木徹夫さんは、こう分析している。

 「いまの若者は自己愛が強い傾向があります。自己愛型は、追いつめられた時に自分を守るのに必死で葛藤する余裕がない。その分、ストレスに対して脆弱です」

 パニック障害とは、かって「心臓神経症」や「不安神経症」と呼ばれたもので、通勤電車や自動車の中で急に呼吸が苦しくなるなど、文字通りパニックになる病。一説によると、日本では男性で100人に約3人、女性ではその3倍、さらに10〜20代の女性に限れば数倍の発症率になるという。

 「パニック障害鬱病を併発しやすく、パニック性不安鬱病といって治療が難しい病です。自殺企図も多く見られます」
カルテは別紙