米国発の国際金融危機は、まだ終わっていない。

このところ、米国の株価や大手銀行の業績は好転しているが、これは昨秋いったん底が抜けたレバレッジ金融システムが一部機能回復しているからで、米経済の根幹だった「借金による米国民の消費」のシステム自体は破綻の兆候がましており、不動産の価値下落は住宅から商業不動産へと拡大している。


日本の預金保険機構にあたる米FDIC(連邦預金保険会社)が最近発表したところでは、米国で問題を抱える金融機関は、今年3月末時点の305行から、6月末時点の416行へと増加した。

金融界には、2年以内に1000行が破綻するという予測もある(米国の金融機関の総数は8千強)。

金融危機の再燃について言うと、逆に、もし来年春まで危機が再燃せず、レバレッジ金融の復活が続くとしたら、それは07年の金融危機開始時よりは規模は小さいものの、レバレッジ金融システムの復活が定着し、米経済は金融主導で好転していく展開になるかもしれない。

「専門家」の多くは、そちらに賭けている。しかし米国の実体経済は、失業増、消費減、不動産続落、財政赤字急拡大、米国債信頼失墜の傾向が続いており、金融や株価だけが、実体経済と乖離した不自然な回復を見せている。

このまま米経済が復活するとは、どうも思えない。

米英覇権体制が崩れて多極化が進み、二大政党制の米英より、中国やロシアなど一党独裁的な国の方が、国際社会で台頭している。

もともと英米が敵を封じ込めるための戦略である、国際社会による各国への「民主化」の要求は、力を失いつつある。共産党独裁の中国がアジアの盟主になるなら、日本も自民党独裁で良いじゃないかという考え方すらできる。


日本は、米英主導の「市場原理主義」に従って日本興行銀行など政府系の政策銀行を解体してしまったが、その後になって、世界ではBRICやアラブ諸国などの政府系投資機関が欧米企業を積極的に買収して台頭したりして、日本も政府系金融機関を残しておけば良かったと考えられる展開になっている。

日本は二大政党制でも、この手の頓珍漢になりかねない。

日本のプロパガンダマシンも、米国の隠れ多極主義には勝てない。米国の覇権が自滅的に崩壊した後、日本の「保守」はどうなるのだろうか。

戦後の日本の「保守」「右派」は「対米従属」を旨としていた半面、「リベラル」「左派」は「反米」の傾向だった。

しかし今、米国が衰退もしくは孤立主義(米州中心主義)に転換し、日本にとって従属できる対象ではなくなる可能性しだいに高まっている。

日本が米国に従属することが良いかどうかという議論は、現実的に意味がなくなりつつある。その後の日本の「保守」「リベラル」「右派」「左派」の区分けはどうなるのか。