世界はなぜ崩壊しなかったのか

 今日の世界には、システムを安定させる3つの要因が機能している。

 第1の要因は、大国間の平和だ。冷戦の終結後、大国同士が軍事的に競い合う状況はなくなった。

次の10年間に待つ最大の課題

 第2の要因は、70年代にインフレを抑え込むことに成功したことだ。当時、世界のほとんどの国はインフレ状態にあり、社会と政治に深刻な影響が及んでいた。
中南米のクーデター、インドの非常事態宣言、イランの王政転覆など、当時の世界で起きていた極めて多くの問題の背景に、インフレの進行による中流層の崩壊があった。

 しかし、世界の中央銀行は揺るぎない意志を持って、ハイパーインフレを抑え込んだ。これにより長期の低インフレ時代が到来し、世界の経済に安定がもたらされた。

 第3の要因は、テクノロジーが発展して世界の結び付きが強まったこと。今やグローバル化とは、世界の国々がほかの国に物を売ることにとどまらない。

企業は世界中から原料や部品を調達し、人々は世界中の人と協力し学び合い、情報は全世界に広まるようになった。
 もしかすると、この情報の拡散こそ安定したシステムが築かれた鍵を握る要因なのかもしれない。

世界の国の多くは、政治の安定が富の創造の前提だと知っている。