デフレからインフレへ

朝倉氏
 いよいよ物が下がり続けるというデフレのパターンが限界に達し、逆に資源高から物価が予想以上に上がっていくというインフレの波が押し寄せる様相です。

 もはや勝者のない戦いに入ったようで、いよいよ消耗戦も限界でしょう。原材料をはじめ、野菜などの食品に至るまで、一時産品の値上がりが止まらない様相なのですからたまりません。

 もともと資源メジャーが3ヵ月契約にこだわるのは資源価格の先高をはっきり意識しているからで、利益の最大化を目指しているわけです。

     資源の需給が構造的に変化した理由

 やはりここまで上がるということは、資源の需給において根本的な構造変化が起こっていることは明らかで、その主因は2000年当たりからBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)の30億人が市場に参加してきたということです。

 これら世界経済の新たな発展は今回のリーマン危機を機に次のステージに入ってきたようです。いよいよその持続不能な姿が資源高、物価高として我々の目にインフレとして現れるということです。

 いかに日本がデフレであろうが、物の値段は世界的な需要と供給のバランスで決まってくるわけですから、結局この新興国の発展に伴って物の値段は上がっていく、インフレ気味になっていく、もっと極端にいうと、一部の資源は急騰していくという世界を覆う流れが始まるでしょう。
とどのつまり、日本も巻き込まれるしかありません。物の値段は上がるのです。もうすでに上がってきています。

 しかし今その部品である半導体の価格は世界的な受容の盛り上がりから昨年の安値から3倍に値上がりしています。

 さすがに半導体がこれだけ値上がりしていてはもうデジタル家電の値下がりは終わりでしょう。値下がりどころか今度は値上げになっていくことでしょう。

「企業物価指数」は企業間の取引価格で景気を判断する重要な材料です。景気、不況、デフレというわけです。しかしこれにも実は大きな変化が出てきています。

 日米とも高額商品の売上が持ち直してきている

 ここ足元では落ち込み幅が大きく減り、逆に上昇するものも目立ってきているのです。また日米とも小売売上に変化が出てきています。高額商品の売り上げが持ち直してきているのです。

 アメリカでは3月の小売売上高が前年比9%増、特に目立つのは高級百貨店の回復で売上が前年比14.2%増という大幅増加となりました。これは明らかに株価の回復による資産効果と言えるでしょう。

現に失業率は10%近辺での高止まりで、とても経済全般の回復がなされたとは言えません。

しかし金融を大幅に緩めた結果、株高を演出し、その恩恵を得る高所得者が増えてきたというのも事実です。

 日本でも似たような現象でしょうか。高額商品の売れ行きが持ち直しつつあるのです。

 しかし、この方向をハッピーな景気回復と捉えたら大変なことになります。デフレからインフレにシフトしつつある流れは、経済を回復させるものではなく、今度は止まらないインフレ、債券安、本当の国家破綻へ至る道の一里塚(いちりづか=目安)なのです。

 本当に日本の景気は良くなって資金需要が出ようものなら金利が急騰して、その途端国債価格が暴落、国家破綻です。

金融システムが崩壊します。結局はその流れを止めることはできませんが、これからはどのようなコースを取って国家破綻に至るのかということでしょう。ギリシアで起こっていることは人ごとではありません。

いずれ英国か米国か日本か、何処から火を噴くかわかりませんが、リーマン・ショックを超える大混乱が待っているのです。
 
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