韓国軍艦「天安」沈没の深層

田中宇

     核武装した原潜が潜行していた?

 第3のブイの存在を報じたKBSは誤報扱いされ、その後は「天安艦は米潜水艦から誤爆された」といった見方自体が「危険な流言飛語」とみなされ、韓国社会で事実上の「禁止」とされた。

 しかし、天安艦が仲間内からの誤爆で沈没した疑惑は、沈没の直後から韓国のマスコミに存在していた。事件当日、韓国軍と米軍は、ペンニョン島より南の海域で、米韓合同軍事演習「フォールイーグル」を展開していた。

米韓の事前の発表では、軍事演習は3月18日に終わったはずだったが、実際の演習は4月30日まで秘密裏に延長され、3月26日の事件当日も演習が行われていた。事件後も米韓当局は、当日に合同演習が行われていたことを全く発表しなかったが、事件翌日には情報がマスコミに漏洩し「天安艦は、軍事演習中の誤爆を受けて沈没したのではないか」という記事を各紙が報じた。

 北側からの攻撃で沈没したのではないなら、残るは誤爆説になる。私が疑っているのは「米軍は、潜水艦をペンニョン島の周辺に常時潜行させていることを、韓国軍に伝えていなかったのではないか」ということだ。

第3ブイに沈んでいる米潜水艦が長期潜航していたのなら、当日の米韓合同演習にも参加していなかったことになる(合同演習とは別の任務になる)。

  中国に委譲された天安艦事件後の南北仲裁

 天安艦の沈没以来、韓国のマスコミや政界は「哀悼」一色で、韓国ではコンサートや娯楽の催し物が相次いでキャンセルされた。韓国の右派はにわかに活気づき「北朝鮮に反撃しろ」と政府に圧力をかけている。

韓国では6月に統一地方選挙があるが、この「天安艦政局」は選挙戦に多大な影響を与えている。

 在韓米軍の内情を知っていそうな在韓国の米国人記者ドナルド・カークは、天安艦事件を「米国の911事件に匹敵する」と言っている。それは言い過ぎだという声もあるが、天安艦が米潜水艦との同士討ちで沈没した可能性を隠し、

北朝鮮に撃沈された疑いがあると言い換え、政界や社会が一気に好戦的になる事態は、米国人から見ると、911にたとえたくなるのは当然だ。

 天安艦事件を機に、朝鮮半島大戦争が再発していたら「思いやり予算」で贈賄しなくても在日米軍の駐留が続くようになり、米国は再び日本を不沈空母と評価してくれて、
日本経済は60年ぶりの「朝鮮特需」でうるおい、日本の対米従属派にとってはうれしい限りだったろう。