代替EG

murakoujin2011-03-30


常温核融合

核融合の専門家は、UCLAの実験は、1989年のものとは違い、物理学の基本原理に完全に則ったものであるので信頼できると語る。

 イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のデビッド・ルジック教授(核およびプラズマ工学)は、「この実験では、過去に試され真実と証明された方法が使われているので、議論をはさむ余地はない。物理学で説明できない部分は1つもない」と述べる。

 核融合パワーは、究極のエネルギー源であり、石炭や石油などの化石燃料に代わるクリーンな代替エネルギーと謳われてきた。化石燃料は後50年ほどもすれば底をつくと言われている。

 核融合では、軽い原子同士が高温プロセスで近接して結合し、その過程で大量のエネルギーを放出する。

 核融合は環境にやさしいと言われるが、その理由は空気をほとんど汚さないことと、現代の原子力発電所につきものの安全性や放射性廃棄物の長期保管といった問題がないことにある。

今の原子力発電所は、核分裂というプロセスで重いウラン原子を分裂させてエネルギーを作り出している。
UCLAの実験では、科学者たちは、熱を与えると強力な電場を作り出すことができる小さな極性結晶を、プラズマ核融合研究で従来使われてきた重水素のガスで満たされた真空の部屋に置いた。

 その結果生じた電場によって、帯電した重水素の原子がビームとなって近くにある標的にぶつかる。この標的には重水素がさらに詰め込まれていて、ビームの重水素原子が標的の重水素と衝突し、融合が起こるという仕組みだ。

 この反応によって、核融合が起きたことを示す、中性子として知られる亜原子粒子とヘリウムの同位元素が発生した。

しかし、この実験では、核融合を起こさせるために要したエネルギー量以上のエネルギーを生み出すことはできなかった。が、核融合の成功自体、画期的な出来事ではある。

ウランより利点の多いトリウム原発へ移行の障害

 原子炉で使用する燃料をウランからトリウムに切り替えることができれば、発生する放射性廃棄物の量は約半分になり、兵器へ転用可能なプルトニウムを取り出せる量も80%ほど減る可能性がある。

しかし、原子力業界がこの転換を実現するには、後押しする材料がもっと必要だと専門家らは語る。

 科学者たちは以前から、原子炉の燃料としてトリウムを利用することを考えていた。トリウムの使用には十分な理由がある——自然界に存在するトリウムは、ウランと比較して埋蔵量が豊富で、使用する際の効率や安全面でも優れている。

それに加え、使用した燃料から核兵器の開発に利用可能な物質を取り出しにくいという利点もある。

 しかし、設計が難しいうえ、使用済み核燃料を原子爆弾へ転用したいという冷戦期の思惑も働き、原子力業界は主要燃料としてウランを採用した。

 各国政府が核兵器の拡散防止に目を向け、環境保護論者が世界中に存在する膨大な放射性廃棄物の削減を求めている現在、トリウムが再び注目を集めている。

 ここ数年の米国とロシアの研究によって、以前研究者を悩ませた問題のいくつかに解決策がもたらされた。そして、1月にはインド——トリウム埋蔵量はオーストラリアに次いで世界第2位——が、独自設計のトリウム原子炉の安全性テストを行なうと発表した。

 需要の増加を見込んで、未採掘の資源も含めてトリウムを可能な限り買い入れようと動き出した採掘会社もある。

 米ノバスター・リソーシズ社(本社ニューヨーク)で戦略企画室の主任を務めるセス・ショー氏は、「米国をはじめとする世界各国——もちろんインドも含む——が将来、トリウムだけを使用するようになるのは避けられないことだと、われわれは考えている」と語る。