絶対無

「無目堅間の小船」の「目無し」ということは、時間の目盛りがないこと、即ち「無時間」を象徴しているのであり「堅間」ということは空間が堅く鎖されて無空間であるということであります。

「小船」の「小」は無時間・無空間の縦横十字の交叉點の極微「無」の一點であり、未だ時間發せず、空間生ぜざる「無」の一點であります。

「小船」の船はそれに乗ると彼岸に渡ることができる「如来の願船」であり、それに乗るとは、絶對無の世界に還帰することであります。

この“絶對無”の小船に乗ることを、ここでは「無目堅間の小船に乗せまつりて」というふうに象徴的に表現されておりますが、具體的にかみくだいて解り易く゛申しますと、

全然「我」というものも「我慾」というものも「我の所有」というものもなくなって「無」になり切ってしまう。