QE3

朝倉氏 90%
 市場が期待しているQE3(量的緩和策第3弾)、いわゆるFRB米連邦準備制度理事会)によるさらなるドル供給によるインフレ政策ですが、一体今後、出てくるのか?封印されたままとなるのか?結論的に言えば、時をおいて必ずやQE3は実行されることでしょう。
というよりは市場から追い込まれていくに違いありません。
 今後着々とQE3の導入への準備も環境も整ってくることでしょう。帰結点はインフレ、全ては2012年のインフレ爆発に向けた猿芝居と言えるかもしれません。

 ひとつは、9月20日に行われるFOMC=連邦公開市場委員会の会合について、1日の予定だったのを2日間に延ばしたということです。実際は、すでにバーナンキ議長の頭にはQE3をはじめとする一定の政策は用意されていると思います。
 ゼロ金利政策を2013年半ばまで続けるという発表に対してメンバー3人からの反対意見にあっています。
 バーナンキ議長をはじめとするFRBの主流派が、如何にQE3をはじめとするインフレ政策に足を踏み出すかということが焦点と思います。

 FRBには必要に応じて景気回復を助ける様々な手段がある、ということも強調していましたが、これもある意味市場に期待を持たせ、投資家に先行きを安心させる手法でしょう。

 現在の米国の景気の状況は悩ましく、一向に上手い政策が打てない形です。とはいうもの、ここに来て景気の急激な悪化は明らかですし、昨年と違って、一方でインフレの芽が出てきています。

 QE3に踏み出せば、インフレの助長が怖いし、また何の手も打たなければ、今度は激しい失速の恐れがあるわけです。

 インフレか恐慌か、どちらを取るかということになれば、これは勢い、目先の恐慌を避けるために、多少、危険性はあってもインフレ政策に乗り出すという選択肢しかないと思われます。

 ECBは、イタリアの国債を買い支えることが、たとえECBの財務体質を犠牲にしてユーロの価値の低下、ひいてはユーロ崩壊の危機まで背負ったとしても、それには目をつぶって、このようなインフレ政策に舵を切ったわけです。

     リーマンショックの時の解決方法
 これはリーマンショックの時も一緒です。今思い出しても凄いと思いますが、FRBはあのAIGに対して20兆円近い公的資金を投入したわけです。

そしてさらに腫瘍金融機関全てに公的資金を導入しました。これも驚くようなインフレ政策だったと言えるでしょう。

 しかし、こうして3年近く経って、AIGも存在していますし、当時軒並み破綻の危機に瀕していたという米金融大手も復活しているわけです。

 振り返ってみれば、当時の思い切ったFRBによる怒涛のようなインフレを恐れぬ資金供給は急場を救い、システムの崩壊を防ぎ、経済の復活に寄与したわけです。

 これと同じことで、昨今の危機、特に金融危機においては、常にラストリゾートとしての中央銀行の活躍があるわけです。

 ユーロ圏の深刻な危機、並びに米国内の急激な景気落ち込みから、金融がただならぬ状況に陥ろうとしています。
リーマンショック時と今回の状況の大きな違い

 さらに今回悩ましいのが、この公的資金の導入、並びにリーマンショック後に行われた巨額の景気対策が簡単には使えないことです。

 この時のつけが、ここにきて重たい借金となって世界を覆っているわけです。となると、リーマンショックの時と違って、これら公的資金、中国をはじめとした景気対策、世界中の景気対策、全て打てなくなっているわけで、この辺がリーマンショック後の状況とは大きな違いです。世界を救ってくれる役者も資金も底をついて世界中が借金ばかりが残っているだけという具合です。

 これは、従来の経済理論が破綻している証左でもあります。

     もはやケインズ経済学は通用しない ところがケインズの主張と違って、借金しても一向に経済が上向かないのです。

ケインズの考えも、1960年代の発展途上の日本のようなケースでは通用したでしょうが、今や先進国経済においては、完全にこのケインズの経済理論も破綻です。

 なにしろ日本を振り返れば一番よくわかりますが、借金をしたはいいが、一向に経済成長が加速することはなく、借金ばかりが膨らんで一向に返せる目途が立たないどころか、借金棒引き、ないしは破綻の極限まで向かうしかない様相なのです。

 この全ての資金を使い切って、借金も限界となった今、もう何も残ってないのです。

 QE3をやるべきか?インフレの恐れがあるからそこまで踏み込むべきではないだろうか?などという涼しい議論は、この秋に訪れる激しい景気の減速懸念に吹き飛ばされてしまうことでしょう。

 そして皆が納得する形で今までのつけを支払うのは、インフレの形の出現ということです。